アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
微かな埃臭さ
-
「おかえりなさい!あっ、ウリエラは?」
家に着いた俺たちを迎えたのは、当たり前だけど春陽と灰吏で。
でもやっぱり俺の心配は皆無で、ウリエラの心配ばかり。まぁ、いいんだけど。
「ただいま。ウリエラは大丈夫、寝てるだけ。ちょっと部屋に連れてくわ」
「よかった……。無事なら、それで。酷いことされてたらどうしようって」
「そう……だな。あぁ、灰吏、後でウリエラの部屋に何か拭くものとお湯持ってきて」
「あぁ、はい」
適当に濁してしまった。
流石にあそこで起こった出来事は、口にするには少し酷で。ウリエラが夢だと思いたい出来事なら、夢のまま終わらせてやりたい。
懐かしいドアを開けると、ふわりと香るウリエラの匂いに混じって、少しの埃臭さ。
本当に帰ってきたんだっていう気持ちと、そんなに長い間離れてたんだという驚き。
綺麗にメイキングされたベッドを見ると、やっぱりあの2人がいつ帰っても良いように家を守っていてくれたんだなと思う。
起こさないようにゆっくりと降ろし、少し寒そうに身を縮める天使に布団を被せてやる。
「ごめんな、ウリエラ」
怖い思いをさせてごめん。守れなくてごめん。傍に居てやれなくてごめん。
たくさんの”ごめん”が溢れる。
この間に、少し痩せたのかな。
以前よりも膨らみを失ったような頬に、目を向ける。天界でどんな生活をしてたんだろう、なんて。
だんだんと視線は下に移る。
もちろん、薄く浮かぶ血管が気になってしょうがない。その命の雫を想像してしまう。
長い間待てを食らわされていた俺の本能が疼き始める。今吸ったら余計負担になってしまうのも、理解してる。
でも、欲望が止まらない。
ドクン、ドクンという規則的な心音が期待を膨らませる。牙をその皮膚に埋め込む感覚を想像して、胸が高鳴る。
”あぁ、美味しそう”
その時、ドアがノックされた。
再び理性が手綱を握る。さっきまでの欲情を外に出さないよう、細心の注意を払ってドアを開けると、そこにはタオルと桶を持った灰吏。
「身体を拭くのでしょう?手伝った方がいいですか?」
「いや、大丈夫」
「って言うと思ってました。桶は使い終わったらそのまま置いておいてください。後で片付けますから」
誰にも見せてはいけない。悟らせてもいけない。
ウリエラが自らの意思で言えるようになるまで、俺の口からは、何も。
その身体を、隅々まで清める。
早く目覚めて欲しい。
もう大丈夫だから。俺が、ずっとそばにいるから。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
192 / 238