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愛しの魔王様
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「魔王様!魔王様ー!!」
”魔王様”を探して走り回るかわいそうな使い魔の声がする。あぁ、どうして”魔王様”はこんなに横暴なんだろうね。
そんな横暴君主様は今は僕の”上”にいるのだけど。
じゃあなんでここにいるって教えてあげなかったって?それは……君主様が必死に腰を振ってるから。
それも魔界の、魔王殿の、魔王の執務室からほんの少ししか離れていない、物置部屋の中で。
「使い魔が探し回ってますよ、魔王様」
快楽に乱れた呼吸の中、必死にそれを伝える。その間も絶え間なく僕のイイトコを刺激し続ける彼のせいで漏れそうになる喘ぎを、必死に噛み潰しながら。
「ほっとけ。どうせつまらない会議の話だ。それとも……俺にはもう飽きた?」
シュンとした表情の端に、こらえきれない笑が浮かぶ。飽きたなんてとんでもない。溺れてる最中だっていうのに。
口を開いたけれど言葉はすべて喘ぎに変わる。
だから首に手を回して、引き寄せる。びっくりした顔をしっかりと目に焼き付けて、まぶたを閉じた。
もう少しで唇に触れる。
そう思った時、再び聞こえてきた魔王様を探す声。
まさか来ないだろうけど。
そのとき、無遠慮にドアが開け放たれた。そこそこ暗かった室内に差した、突然の光に視界が霞む。
立っているのは1人。逆光になって顔は見えない。
「ここや!……って、あー、お取り込み中やったみたいやな。ほな」
圭さんの手によって再び乱暴に扉は閉じられ、また2人残される。さっきまでみたいな熱くて甘い空気は、換気されたみたいで。ただ気まずさが残る。
恥ずかしさやら何やらで反狂乱になりながら、上で固まっている冬夜を退かして、サッと服を着て逃げる。
出てってすぐに意外と早かったなぁなんて聞こえたのは気のせいだと思う。いや、うん、気のせいだ。
▽
僕が逃げた先はテラス。頬の火照りと、中途半端に残された身体の熱を冷まそうと外に出た。
けれど初夏を少しすぎたこの季節。じっとりとした熱気が僕を包む。魔界の空には、ひっそりと、紅い月がのぼっていた。
「冬夜の馬鹿」
ボソリと呟いた、誰もいない虚空に消えるはずだったその言葉。
「誰が馬鹿だって?」
背中に感じた大好きな熱と、耳にかかる吐息。後ろから回された腕を、僕の怒りを伝えるように振り払って、彼に向き直る。
「冬夜。言っとくけど、僕まだ怒ってるんだからね?」
「悪かった。誰か来るとは思ってなかった。それに……」
申し訳なさそうに顔を歪めた彼に、ほんの少し心が和らぐ。
「それに?」
「お前だって乗り気だったし」
心の中で盛大なため息をついた。珍しくしおらしいと思って、それに免じて許してあげようかと思ったのに!
「もういい。冬夜なんて大っ嫌い!」
クルリと背を向ける。
何も言ってこない。けど、気配は背中に感じる。
怒ってるのかな。
少しだけ頭を動かして、目の端でほんの少し盗み見る。想像の彼は、とても怖い顔をしている。本物は?見るのが怖くなってきた。
え?
それはそれは綺麗な笑顔。
瞳の中は、情熱が燃え盛っていて、僕を見つめている。焦げそう……。
「ウリエラ、お前がいると、いつも我慢ができなくなる。有能なところも、それでいてドジなところも、笑った顔も、怒った顔も、そんな風に照れた顔も、全部、いつでも俺を煽る」
照れた顔って。今は見えてないはずなのに。自分でも見えないけど、実際に頬が熱い。
もう一度回された腕を、今度は拒絶しなかった。
「前に天界に拉致された時、生きた心地がしなかった。今も喧嘩して、その度にお前を失ったらって思うと、正直怖い」
僕も一緒だ。冬夜がいなくなったらって、気が気じゃない。
「だったら一緒にいてよ。僕を捕まえてて。こんなふうに」
首元にある彼の腕に、そっと手を添える。息を呑む気配がする。
「あぁ、絶対に。何があっても、もう離さない」
「うん。でも……後悔しても知らないからね!」
”離さない”その言葉の真剣さに、心臓がきゅんと跳ねた。照れ隠しのその一言に、小さく頷いた彼の髪がくすぐったい。
空を見上げると、紅の月すらも、見ていられないかというように姿を隠していた。
______fin______
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