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狩り
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「ふあぁぁ」
眠い。
でも断続的に訪れる激しい渇きに、意識が、そして本能が覚醒していく。いつもよりほんのわずかに強い血液への欲求が徐々に思考を蝕んでゆく。
生あたたかい、紅の液体が身体を、心を満たす快感に心踊らせながら、家を出た。
行先はいつものバー。そこは俺の縄張り。
俺の、狩場。
今日はどんな人間にしようか。
夜風に少し乾燥してカサついた口唇を唾液で濡らす。
月蝕の夜。何かが起こりそうな予感。
カラン……
バーのドアを開ける。そしていつものように、カウンターに視線を向けた。
’’見つけた。今日の獲物’’
ここら、というよりこの国ではかなり珍しい、くせ毛のブロンドの髪。気怠げに伏せられた黄金のまつげから覗く瞳はサファイア。白い肌は酒のせいかほのかに火照っていて。清廉な印象を与える美少年だった。
今夜は月蝕。こんな特別な夜には最適。
俺は少年との間を、ひとつ空けて座った。
ふと彼の手元を見てみると、そこにはグラスに入ったワインがある。今日はそんなに強い酒を飲みたい気分じゃない。そう思い、俺もワインを頼んだ。
どうやって誘おうか。
ワインなんかじゃ満たされない衝動が感情を高めさせる。今日はいつものようにじっくりと口説くのは無理。そう判断して、とりあえず声をかけてみる。
「君、誰か待ってる?」
「いいえ。人を探していたんですけど、当てが外れてしまって…仕方が無いからひとりで飲んでるんです。」
「それワインだろ。好きなの?」
「ええ、まあ。」
「今夜ひとりなんだよな。家来ない?いいワインがあるんだけど、ひとりじゃ開けらんないんだわ。」
「本当ですか!うかがいたいです!!!」
意外と簡単に釣れた。
さっさとグラスを空け、会計を済ませて店をでた。
逸る気持ちを抑えながら、家に向かって歩く。
2人を照らす月は、ほんの少しだけ、欠けていた。
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