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天使
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「兄さん!どこに行くの?やだ、僕をおいて行かないで!もう…寂しいのはやだよ…。」
______
幼い頃の自分は、天使としてひどく優秀だった兄が大好きで大好きで。いつか自分がその背に追いつくことを夢みていた。あの日までは。
あの日はとても嫌な予感がした。
朝、いつも通り仕事に出る兄を見送り、自分も学校へと向かった。
しかし、その日は朝から身体が熱っぽくて、2限の途中で早退させてもらった。誰もいない部屋に帰るのは気が滅入ったが、多分また熱が上がっている。
部屋にたどり着いたとたん、倒れ込む様にして眠りに落ちた。
______
ガチャ
ドアの開く音がした。きっと兄が帰ってきたのだろう。どれほど僕は寝ていたのか。熱で少しだるい身体を引きずって、玄関まで兄を迎えに行く。
「おかえりなさい。兄さ……」
しかし、そこにはいつものように凛とした美しい兄の姿はなかった。
血にまみれ、苦痛そうな、でもその中に快楽を求めているような、浅ましい獣しかいなかった。熱に浮かされた僕の目に、その淫靡な獣は美しくも、恐ろしく写った。
そのままその獣は、兄は、フラリとどこかへ消えてしまった。熱のせいなのか、恐怖のせいなのか、凍りついた僕の手足は、兄を引き止めるまでに至らなかった。
後日、僕は兄が堕天したのを知った。あの兄が?どうして。
きっと何か理由があるに違いない。そう思わなければ、当時の僕の精神状態では受け止めきれないほどのショックだった。
嫌な夢を見た。
目を開いた先にぼんやりと映る天井は、見慣れないものだった。
ここは?
そういえば、昨日の夜はヴァンパイアに血を吸われてたんだっけ…。
そうだ、ヴァンパイア。アイツはどうなった??任務は??
気になって飛び起きようとしたが、それはかなわなかった。
血が足りない。
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