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虚構
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目を開くと、そこは一面真っ白な世界。
反射光が寝起きの瞳に眩しい。
ここはどこだろう。
すごく広大な場所にいるように思えるのに、つきまとうのは謎の閉塞感。自分が着ているのも真っ白で、感覚的には病院が近いのかもしれない。
少しだけ探索してみようと歩く。でも、どれだけ進んでも、景色は変わらない真っ白なまま。
それでも進むと、何かが視界に入る。
近寄ってみると、それは小さな子供らしい。
ふわふわとした金色の髪に、ふっくらとしたバラ色の頬。服は僕と同じ、真っ白なものを着ている。
その姿は写真の中でしか見たことのない、幼い頃の僕に瓜二つだった。
「どうしたの?君はお名前、言える?」
声をかけてみると、サファイアの双眸がこちらに向けられる。瞳の色まで同じだと、とうとう僕とこの子は同じ人間なんじゃないかとさえ思える。
「ぼくね、まいごになっちゃったんだ。お兄ちゃんにね、天使は神さまの近くをはなれちゃだめって言われてたのに、ぼくが約束やぶっちゃったから…。」
今にも泣き出しそうな男の子を抱え、歩き出す。
そういえば、昔兄さんにそんなことを言われたっけ。
《神様の近くを離れてはいけないよ。たとえ俺が仕事に行って帰ってこなくても、絶対に探しに来ちゃダメだ。ウリエラ、約束だよ。》
兄さんとそんな約束を交わした時、兄さんがどこか遠いところにいるような気がして寂しくなったのを覚えてる。
『こっちよ、ほら、早くその子を連れて来なさい。』
どこからか謎の声が聞こえた。
声質は男性だけど口調は女性。すごく胡散臭いけれど僕達だけではどうすることもできないから、その声のする方へと向かっていく。
まっすぐ歩いていくと、声の主はいた。
この空間にもっとも似つかわしいと言っていい純白の白衣に身を包みながらも、その色からは程遠い存在。
コイツ、悪魔だ。
天界での癖で、瞬間、警戒態勢に入る。
「やだ、そんなに警戒しないで。これはあなたのお兄さんに頼まれたことだから。」
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