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兄弟
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「えーっと、どうも、神崎 創汰です。薬利先生の助手をさせて頂いてます。今日は宜しくお願いします。って怪しいですよね、俺。」
薬利先生がなんの連絡もなしに人を連れてきた。日頃助手なんて持たない薬利先生のことだから、彼をそう置いているということは、相当信頼しているのだろう。
先生の部屋はあらかじめ用意しておいたから良いものの、もう1人、神崎さんの分は用意出来ていない。
はぁ、ほんとあの人は面倒事を増やしてくれますね…
まったく、先に連絡してくれればいいものを……
部屋はウリエラの部屋の近くがいいということで、ついでにウリエラの様子を見に行く。
扉の前に立つと、意識は戻ってるだろうかとか、喉はかわいてないだろうかとか、想像が一気に頭の中を駆け抜けた。
扉を開けるのを躊躇っていると、ひとりでにドアが開く。
次の瞬間、腹部に感じる衝撃。
ウリエラが抱きついてきたのだと分かるには少し時間がかかった。それでもまだ、私の思考は追いついていない。
弟がこっちに来てからなんとなく気まずくて、お互いに避けていた。会話はするけどどことなく他人行儀で、でも心のどこかで以前のような関係を望んでいたのかもしれない。
だから久しぶりに感じた弟の体温を嬉しく思ってしまう。何かに怯えるように、ギュッとしがみついてくるウリエラを、優しく抱きしめる。
「大丈夫ですか、ウリエラ。喉とか、乾いてません?」
そう聞くと、腕の中でコクリと頷く。
「水を持ってきますから、まだ寝てなさい。」
ベッドに連れていき、布団をかけてやる。どことなく寂しげな彼の頭を撫でると、なんだか昔に戻ったような錯覚が起きる。
冷蔵庫にミネラルウォーターが入っているのを思い出して、キッチンに向かった。
途中のリビングでは楽しげに談笑している3人の姿。歳も近いからだろう。特に神崎さんと春陽が親しげだった。若さに満ち溢れる2人はなんだか初対面だとは思えなくて、実を言えばとても似合っていた。
幸せな午後。
本当にそう思えるはずなのに。
それなのに何かが引っかかる。
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