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看病
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「春陽まで倒れるとは……どれだけひやひやさせたら気が済むんですか、あなた達は。」
「ごめんなさい。迷惑を掛けてしまって…。」
そう言うと、ちょっと怒ったような顔を見せる灰吏さん。
「迷惑なんかじゃないですよ。ただ私の心臓がいくらあっても足りないって思うだけで。心配してるだけです。」
「うぅ…。」
立ちくらみみたいなものだったし、僕はもう大丈夫だった。だけれど、医者が言うならってことで今はベッドの上にいる。
普通なら退屈するところでも、灰吏さんが傍にいてくれるからそんなことは全く感じない。
さっきからずっと続く小言も、嫌には感じない。どころか何故か嬉しく感じる。
コンコン
「ちょっと。イチャイチャしてるとこ悪いんだけど、ひなのこと聞いてもいいかしら?」
「うん、答えられることなら答えるよ。」
「突っ込まないのね…。さて、ひな、今日みたいなのは初めてかしら?」
「初めてだと思う。」
「最近冬夜が血を吸ってるかどうか、分かる?」
冬夜が?
そういえば最近、冬夜と入れ替わってる時の記憶がすっぽり抜けている。ちょっと前までは曖昧だけど、夢みたいなものがあったのに。
「それは分からない。ウリエラに聞いた方がいいんじゃないかな。」
「それもそうね。んー、今回はただの貧血かしらね。治療のこともあるし…」
「ねぇ、その”治療”って……」
Pipipipipi…
突然部屋に鳴り響いた電子音に、僕の声がかき消される。
「はい、薬利です。」
それはエルの仕事の電話だったらしい。いつもとは違う、硬い雰囲気で、男らしい口調で、応対をしている。
「…ごめんなさいね、ひな。急患らしくて。何かあったら連絡してちょうだい。念のため創は置いてくから。いいわね、創?」
「いいですよ。ほらっ、急患なんだから早く支度してください!こっちも大変な時は緊急用の方に連絡しますからね。」
バタバタと支度をしているエルを見て、やっぱり”大人”なんだなと思う。
父さんの跡を継ぐ為に大学を出た。でも、例え父さんが帰ってきても、今まで仕事の話は一切無い。
僕はどうしたらいいんだろう。
漠然とした不安が、頭をよぎる。
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