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買い物 2
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前にこの街に来たのは、冬夜と出会ったあの日。
月蝕の夜には人なんてほとんど歩いてなかった通りも、昼間となると別の街かと思えるほど活気に満ちている。
「今日の目的は食料ですが…それどころじゃなさそうですね。ウリエラ、離れないで下さい。迷いますよ。」
周りに見える何もかもが新鮮で、ついつい目移りしてしまう。フラフラと歩いている僕を繋ぎ止めるものは何も無い。はずだったのに。
「兄さん…これは?」
僕が視線を向けたのは、僕の手。もとい兄さんの手。包み込むように僕の手を握る兄さんの手は、大きい。
「繋いでないとフラフラして危ないでしょう。ふふっ、そういえば昔もよくこうやって繋いでましたね。」
小さい頃はずっと、何があっても離さなかったその手が、今はなんだか恥ずかしく感じた。
「昔は昔でしょ!もう僕もいい大人なんだから、街くらいひとりで歩ける。」
「いいえ、変わりませんよ。私の中ではずっと貴方は可愛い可愛い弟ですから。」
「っっ_____」
なんだって僕の周りの人間は、こんなに甘いセリフを惜しげも無く吐けるんだろう。
兄さんは、天然で言ってるからタチが悪いんだけど。春陽もそう。
冬夜は?あれは本気で言ってるのかな。
”ダメッ!考えるだけでゾワゾワしてくる!”
ブンブンと左右に頭を振って、頭の中から考えを追い出す。
その時ふっと視界に入ったアクセサリーショップ。そこにはなにか、惹かれるものがあった。
「ねぇ、兄さん。あそこ覗いていい?」
「あそこって…どの店ですか?」
「そこの角のアクセサリーショップ?」
「へぇ、あんな所に店なんて出来てたんですね。最近出来た所でしょうか。」
二人で店の扉を開けた。
カランと乾いたベルの音がして開いたドアから見える店内は、アンティーク調で、落ち着いた雰囲気。
あ、この輪っかのやつ、冬夜に似合いそう。
センスよく並べてあるシルバーのアクセサリーは、どれも輝いていた。
その中の一つ、薔薇をかたどったようなデザインに心を奪われる。
「シルバーの薔薇の意味をご存知ですか?」
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