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緊張
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家に着いた。
久しぶりの外出は楽しかったけど、すごく疲れた。人に酔ったみたいで、少し気持ち悪い。
そして、冬夜の姿も、神崎さんの姿も見えない。
ほんの少しだけ、ほっとした。
「どうしよっかな」
廊下を歩きながら冬夜の部屋の前を通っても、気配はない。このまま自分の部屋にいても気が滅入るし、端末だけ持ってリビングに行く。
こんなとき春陽がいたらな…
絶対にいろんな愚痴を言ってる。で、多分しっかり最後まで聞いてくれて、どうしたらいいかを一緒に考えてくれる。
1人でいる夕方のリビングはなんとなく寂しくて、鬱々とした気分になる。
端末を開くと、さっきちょうど読み終わった小説が表示されていた。
次は何にしよう。
オススメ欄を開くと、一つ、目に止まった小説。ポップな色使いの表紙が目を引く。
レビューを見てみると青春とか、ピュアな恋愛とか、そんなふわふわした単語が並んでいる。
普段だったら絶対に読まないそれを、ついつい手に取ってしまう。試し読みだけ、そう自分に言い聞かせてたけど、予想外に面白かった。
いじわるしてくる男が嫌なのについつい視線が行ってしまったり、素直になれなくてちゃんと想いを告げられなかったり。
どこか危なっかしい主人公の女の子に、共感してしまう。
僕は時間が経つのも忘れて読み進めていた。
「ご飯にしましょうか。2人を呼んできてもらえますか?」
「いいけど…2人ともいるの?」
「はい、さっき帰ってきましたよ。」
兄さんから頼まれたなら仕方ない。
まずは…神崎さんから。
ノックをすると、返事があって、内側からドアが開く。
「あ、ウリエラくん、復活したんですね!」
「えっと、ご心配をおかけしました。あと、ご飯みたいです。」
「いいえー。ご飯なら一緒に行きましょ?」
「いえ、僕は冬夜を呼ばなきゃいけないから…」
「あぁ、じゃあ俺は先行ってますね。」
あっさりと神崎さんと別れた僕は、冬夜の部屋へと向かう。心臓が痛いほど鳴っていて、息が、苦しい。
神崎さんの部屋から冬夜の部屋まではそんなに距離がない。心の準備なんてする暇はなくて、ドアの前で動きが止まる。
何度か手をかけようとしては引っ込めた時、ひとりでにそれは動いた。
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