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謝罪
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「ん?何してんの、そんな所で。」
「え…と、兄さんがご飯だって。」
なんで今日は僕の心が読まれたみたいな出来事が多いんだろう?
びっくりするけど、なんだかもう慣れてしまった。
「そ。じゃあ俺も行く。」
冬夜の返答が、いつもよりも少し素っ気ないような気がして、辛い。
廊下を二人で歩いてる時も会話はない。沈黙が肩に重くのしかかってくる。
もう少しでリビング。
そう思った時、くっと手を引かれた。誰だ、なんていう問は愚問。ここには冬夜と僕しかいないから。
「夕飯のあと、俺の部屋に来て。話をしたい。」
真剣な顔で告げた冬夜に、僕の身体にも力が入る。
話ってなんだろう。
嫌な想像が瞬時に頭の中を汚染していく。じわっと滲みそうになる涙を堪えて、こくりと頷く。これが今僕に張れる、精一杯の虚勢だった。
▽
いつも美味しいと感じる兄さんのご飯も、今日は味を感じなかった。ちっちゃい頃から大好きだったカレーなのに、なんの感動もない。
ひとすくい、ひとすくい。無慈悲にも時間の流れは速くて、皿に盛られたそれは、なくなっていく。
ガタリと椅子を引いて立ち上がった冬夜は、食器をもってキッチンへと消える。
食事中も1回も目を合わせなかった。それが、このあとの話が良くないものであることを暗示している気がする。
「ウリエラ」
掛かった声に、全身で反応する僕。早くしろ、と言わんばかりの声。声の主はもう部屋から出ようとしていて、慌てて追いかける。
追いついたけど彼は振り返らない。再びの沈黙。
静かに開けたドアから、中に通される。冬夜は何か重大なことを決めたような、硬い顔をしている。
「ねえ、話って…なに?」
ちょっとだけ声が上擦ってしまったのが恥ずかしい。でも、多分僕が切り出さなかったら、話は始まらなかったと思う。
「ほんとに、ごめん。」
唐突の謝罪。
「…なにが。」
「……」
「なにが?」
答えのない冬夜に、僕の震えた声が届いたのか心配になって、もう1回同じ問いかけをする。
「俺、分かってなかった。あれ浮気だよな。ちゃんとお前のこと、考えられなかった。だから…」
「だから、僕と別れようとか言わないよね。」
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