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幸せな
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「はぁ…。俺にはお前のこと、ずっと背負ってける自信ない。で、永遠の愛は誓えない。」
その言葉を聞いた時、僕の頭は真っ白になった。
僕のこと嫌いになった?いらない?
昼間にずっと考えてた黒いことが現実になりそうな予感がして、怖い。
冬夜が何を言ってるか分かんない。これ以上聞きたくない。でも、過敏になってる聴覚は、そんなことを許さない。
最後の言葉かもしれない。その意識が頭にその言葉を、声を、そして表情を、刻みつけようと必死にさせる。
そこで僕は気づいてしまった。
冬夜の、辛そうな表情に。
どうして貴方がそんな顔をするの?辛いことを平然と吐く貴方が、なぜ?
こんなときに鈍感になれない僕が憎い。気づかなければ、こんなに心がざわつくことなんてなかったのに。はいそうですかって喧嘩して、素直に天界に戻ることができたのに。
気づいたら感情のままに、全てを吐き出していた。ポロポロとこぼれる涙も、気にならなかった。
「はぁ…。俺の負けだよ。ホントに、俺の負け。」
そして感じる大好きな熱。
優しい温もりに包まれて、安心する。
「ねぇ、冬夜、僕嫌だったんだよ。冬夜が神崎さんの血を吸うの。」
「うん」
「なんで僕のは吸わないのにって思った。」
「うん」
「これからは、僕だけを見てて。よそ見なんてしてる暇がないほど、僕に夢中になって。」
「…うん」
ぎゅっとより強くなった腕の力に、喜びを感じる。そのまま、ずっと離さないでほしい。僕がどこかに飛んでいかないように、しっかり捕まえていて。
「ウリエラ、目をつぶって」
言われるままに目をつぶると、離れていく熱。彼がどこかに行ってしまうんじゃないかと不安になって目を開けようとすると、ダメだよ、と宥められる。
再び彼の体温を感じて、しかし首に回される何か冷たいもの。
「いいよ、目を開けて。」
真っ先に、首に触れたそれを確認する。緩めのチェーンに繋がれているそれは、見覚えのあるものだった。
「これ…」
「やっと泣き止んだ。お前にどれが似合うとか分からなかったけど、なんか惹かれたんだよ、それに。」
首元にあったのは、今日僕が昼間見ていたシルバーのバラ。こんなところで、また巡り会えるとは思いもしなかった。
「どうしよう…。こんな事されたら…。絶対に冬夜から離れられなくなっちゃう。責任、とってよね。」
顔をあげずに視線だけを上にあげると、満足そうで、照れくさそうな彼の顔。
僕の視線に気づいた彼は、僕の顎を掬うようにして持ち上げる。
「分かったよ。わがままなお姫様。」
幸せな空気と、甘い甘いキスの味。
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