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散歩
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「綺麗ですね、空」
散歩に連れてきたのは、神官庁の前の公園。ここは天界随一の広さと自然を誇る、自然公園である。
この地区には、この公園や神官庁の庁舎、そして天使大学など、天界の重要な建物が全て集まっている。
その分警護は厳重だから、ウリエラくんを外に連れ出しても、一応の見張り役がいれば問題ないわけだ。
まぁ一応お忍びということで、人気のないところを歩いているのだけど。
「んー、そうだねー」
天界には残念ながら、下界のような天気の変動もなければ四季もない。
でも俺はこの場所が好きで、公務が嫌になった時、ここに逃走してる。
「僕、大学にいた頃も全然外に出なくて…ここってこんなに広かったんですね」
「また来たらいいよ。1人では行かせてあげられないけど、誰かと一緒にさ」
敬語を使うのも面倒くさくて、やめた。もともとそんなキャラじゃないし。ウリエラくんも気にしていないみたいだからそのままで。
「じゃあ神様、また僕と一緒に、ここに来てくれますか?」
そういって少し先を歩いていた彼が振り返った。その顔には笑が浮かんでいる。
でも、どこか危うげだった。
本人が感じていない違和感を、体は訴えている。自分には何も無いという孤独感に、庇護欲をそそられる。
罪悪感みたいなものがないわけじゃない。ずっと探していたお兄さんや、冬夜さん、春陽さんを俺がこの手で奪ったのだから。
でも後悔はしてない。
俺が新しい家族になってあげよう。神と血縁になれる。それほど光栄なことはないだろう?
「俺でいいなら、いつでも」
「あぁ、でもちゃんと仕事をやってからですね」
「ウリエラくん…別にミカの真似をしなくてもいいんだよ?」
ふ、と笑いがこぼれる。
さっきのなんとなく、作ったような笑顔じゃなくて、本物の笑顔。
「手を繋いでもいい?」
「はい?どうぞ」
差し出された手のひらは真っ白で。折れそうなくらい細い指に、俺のそれを絡める。
俗に言う”恋人繋ぎ”。
驚いた顔をする目の前の天使にふっと笑いかける。
「そろそろ帰ろうか」
少し赤くなる彼が、コクリと頷く。暖かいような冷たいような、微妙な風が吹く。
ぎゅっと少し強く握った時、手が強ばったのには気づかない振りをした。
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