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門
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車を走らせて、しばらくたった頃。今は山道を登っているのだろうか、周りには鬱蒼とした森が広がっている。
車内はあれ以来沈静を保ったままで、誰一人として言葉を発する者はいない。
その空気から逃れるように、僕は窓の外をひたすら眺めていた。すると目の前に建つ大きな門。
なんでこんなところに、こんなに立派な門が?
よくよく目を凝らしてみると、ミカさんと同じ白い軍服を着た男性が二人、門の両脇を固めるように向かい合ってたっている。
「通行証はお持ちですか」
一人の兵士が運転席に詰め寄る。
警備はとても厳重そうで、この堅牢な門の先には、一般の人々には知られてはならない秘密が眠っているのだと察する。
「私です。神様の使いで下界から帰るところなのですが」
ウィンドウを下ろしてミカさんが顔を出すと、血相を変えて瞬時に敬礼をした二人。
「はっ、神官庁 戦天使課 課長 ジャン ミカ様でありましたか。今回はどういったご用件で下界へ?」
「貴方がたにそれを聞く権限はないでしょう。もしあったとしても、この任務は極秘ですのでお教えはできませんけれどね」
冷たく言い渡したミカさんに、二人の衛兵は固まる。それはもう、瞬間冷凍されたマグロのように。
「しっ、失礼いたしました!どうぞ、お通り下さい!!」
再び敬礼をして門を開いた兵士が、すごく可哀想に思われた。
そんなにきつく当たらなくてもいいんじゃないかな
なんて思うけれど、これは向こうの問題。僕が口を出すことじゃない。
「ここからは天界になりますが…神官庁まではもう少しかかります」
後ろでガチャンと門が閉じられた。
もう逃げられない。まぁ、もとから逃げるつもりもないけど。
でも安易に戻れないというのは、精神的な圧迫感が大きい。
進行方向に見える高い高いビル。
ランドマークのようにそびえ立つそれが、きっとミカさんの言う神官庁の建物。
そこに創汰さんとウリエラがいる。
冬夜がどんなつもりでいるかはわからないけど、きっと結んだ唇からは並々ならない決意が感じられた。
気づけばその塔は目前。
邂逅まで、ほんの数分。
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