アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嫌だ
-
「神様、ミカです。客人をお連れしました」
基本的に僕はミカ課長の御用聞きしか仕事がない。下手したら1日暇だって時もある。
何故かは分からないけどあの任務のあと、僕はずっと神様かミカ課長の目の届かないところには行くことができないようになっていた。
僕はいつものように、神様の執務室の隣室で読書をしていた。
ここはとなりの部屋の音もよく聞こえる。だから、さっきの課長の声も聞こえた。
「ウリエラくん、お客さん来たよ」
あれ、やっぱり冗談じゃなかったんだ。
「本当に僕が行っていいんですか?」
「もちろん。待たせちゃ悪いから、早く行こう」
しぶしぶ、立った。なんだか行ってはいけないような気がした。僕の手は無意識に胸元のバラを弄る。
これがあれば大丈夫。
何故かそう思えた。
そして
「に…い……さん?」
ずっと探していた兄さんが、僕の目の前に、しかも神様のお客さんとして来ている。ただその雰囲気は、綺麗じゃない。
魔に穢れているような。
そこで僕は気づいた。他に二人いることに。双子のような二人の片割れが、魔族だということに。それも、見覚えのある。
「神様、どうして僕の討伐対象だったヤツが、ここにいるんですか」
僕の声は低かった。
今まで出したどの声よりも、低かったと思う。何故神様が、こいつと知り合いなのか。そして、何故、わざわざ僕の目の前に客人として呼んだのか。
「なに…言ってんだよ、ウリエラ」
「魔族が僕の名前を軽々しく呼ぶな」
嫌だ。
やめろ。
僕は天使。お前らなんかが、易易と近づいていいような存在じゃない。
それでも距離を詰めてくるヴァンパイア。それに合わせて後ずさるけれど、いくら神様の執務室が広いと言っても限界がある。
背中が壁にぶつかる。
ここじゃ逃げられない。助けを求めて神様を見ても、こっちに目線を合わせない。完全に、逃げ場はない。
「でもこれ、してんだな」
僕の胸元に伸びた手が、バラに触れる。
パシッ
「っやめろ!それは神様からもらった大切なもの。お前なんかが触ったら穢れる!!」
僕の振り払った手を抑えたヴァンパイアは、何故だか悲しそうな顔をする。
なんでそんな悲しそうな顔をするんだ。
お前が僕の記憶を奪ったんだろう?下界に赴いていた長い間の記憶を、消したのはお前なんだろう?
「ウリエラ…」
やめろ
そんな声で僕を呼ぶな
名前を呼ばれる度に切なくなる。僕の知らない僕の心が、泣いてる。
分からない
わかりたくない
お願いだから、これ以上、僕の心をかき乱さないで
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
119 / 238