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本心
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「なんで貴方のところに、あんな奴らが来るんですか。兄さんのことだって知ってたんでしょう?」
再び部屋に戻ってみると、ソファの上で完全に不貞腐れたウリエラくんの姿。
御門家御一行…特に冬夜さんにちょっかいをだそうとして向かった彼らの部屋だけど、ミカに追い返されてしまった。
「あんな奴らって…。彼らは俺の下界での知り合いだよ?丁度君が下界に行っていた頃のかな」
情報は少しずつ、与えてあげる。その方が面白いしね。
ばっと顔をあげて、また膝の間に埋める。
「っていうことは僕が向こうでなにをしていたか、知ってるってことだ」
流石に馬鹿じゃない…か。
さっきまでのむくれた顔も可愛いけど、今の知りたくて知りたくてたまらないって顔も良い。
「知らない…って言ったら嘘になるね。知りたい?」
丸まっている彼の横に腰を下ろす。俺の体重がかかったところが、ギシリと沈んだ。
「教えてください」
真っ直ぐなウリエラくんの視線が刺さる。期待と信頼に満ちた顔をスルリと撫で上げる。
「君にとって、忘れてた方がいいものかもしれないよ?」
事実を知って君はどう思うだろうか。
俺が連れ去ったこと。記憶を消したこと。何より冬夜さんと、愛し合っていたこと。
君のここでの生活は、俺がついた嘘の上で成り立ってる。事実という確かさのない、不安定な土台の上に。
「それでも、教えて欲しい」
多分今は本当に記憶を取り戻したいというよりも、彼との関係とか、自分の中にかけてるものを取り戻したいとか、そんな感じだと思う。
「なーんてねっ!事実は自分で確かめたらいい。冬夜さんに聞いたら教えてくれると思うから」
呆気に取られた顔。
さっきまで触れるだけだった頬を、ぎゅっとつまむ。恨めし気に上目遣いで見上げてきたその顔は、さっきより心做しか柔らかかった。
これで冗談めかすことができただろうか。
本心を悟られるのが怖い。
神様は大きな権力を持っている。
神様は平等でなければいけない。
幼い頃から俺の周りにはこの強大な力を求めて媚び諂う汚い大人ばかりだった。
本心を見せたら喰われる
それを学んだのはいつだったろうか。遠い昔過ぎて、もう忘れた。
「神様?」
突然固まった俺を、不審に思ったんだろう。声をかけてくれた君に、笑ってみせる。
「大丈夫だよ。残念だけど、仕事をしないとミカに怒られちゃうから俺はもう出るね。じゃあまたあとでー」
笑顔で部屋をでた。数歩ふらふらと歩いて、壁にもたれかかる。
「はー、らしくないなー」
こんなとこ、誰にも見られてなきゃいいけど。
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