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僕の価値
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「あそこまで惚気られるとは思ってなかったんだけど……あそこにミカがいたらどうなってたと思う?バッサリ切り捨てられてたよ、2人ともね!」
外へ出ても尚、神様はあの光景を気にしてるらしい。興奮気味で口調の早いその声を聞くのは、僕しかいない。
この数日、僕は気づいたことがある。
揃っていたと思われた記憶が、欠けていることに。それも、一番大事なところが。
パズルは完成しなければ意味がない。
「神様、一つ聞きたいことがあるんです」
「なに?」
「僕、天界に来た時の記憶がないんです。あの前後、何があったのか」
「それは……知らない方がいい部類の事実かもしれないよ?というか俺はそう思うんだけどね」
「僕、分かったんです。記憶が無いってすごく怖いことなんだって。聞いて後悔することはあると思います。でも、記憶が無いことに怯えるよりかはマシかなって」
すごく、怖かった。
僕はその人のことを知らないのに、相手は知ってる。それが記憶のない間に親しかった人ほど、相手にも辛い思いをさせてしまう。
だから、知りたかった。
「君はね、ボロボロだったんだよ。この世界に絶望して、人間に絶望して、魔族に絶望して、それより何より自分自身に絶望してた。だから俺が、まっさらにしてこの世界に連れてきてあげた。これが君の知りたがってた真相」
どういうこと?
「僕が知りたいのはもっと詳しい……」
「詳しいなに? 現実を知りたいの? 神様も慈善事業じゃないからね、ここから先は有料だよ」
「有料……ですか?」
「そう。でもお金はいらないからなー。そうだ、ウリエラくんがここに残ってくれるなら、教えてあげようか」
どうして神様はそんなに僕に固執するんだろう。
僕よりももっと有能な天使はいる。
もっと綺麗な天使だっているのに。
「僕はここに残るつもりはありません。それだったら教えて頂かなくて結構です」
「そう。じゃあ代わりにこんな情報を教えてあげようかな」
代わり?
「この短い期間にね、2人も堕天使が出てしまったんだよ、有能な人材の宝庫であるはずの戦天使課から。」
それは多分、僕達のことだ。
兄さんが堕天したのも、そう遠い昔じゃない。
「しかもそれは全部、ある大きな家のせいでね。天界はそれで真っ二つ。でも最近は過激派の方が強いんだよね。このままだと魔族と天界の全面戦争が起こるかも……っていうお話でした」
それがなんの代わりになる?
「不思議そうな顔をしてるね、ウリエラくん。当ててあげようか。そうだな……僕には関係なくはないけど、直接はどうにもできなくない? ってところかな」
間違ってはない。
ここが昼下がりの公園だってことは、とうに記憶から消え去っていた。
「1人でも戻ってくれば、きっと過激派の皆さんも収まってくれると思うんだよね。どう? こっちに来ない? 君の決断で、皆を救えるんだよ?」
僕の決断が?
そんなの………
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