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涙の海
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「だから、僕はここに残ります!今までありがとう、冬夜。ずっとずっと、大好きでした!」
最後に、笑った。
せめて最後位は、笑っていたかった。
ここまで迎えに来てくれて、ありがとう
僕のわがままにつきあってくれて、ありがとう
僕のことを愛してくれて、ありがとう
大好きだった。愛してた。僕の世界に、たくさんの愛をくれたあなたと、ずっとずっと一緒にいたかった。
今までもこれからも、きっとあなた以上に愛せる人はいないんだろうな
そんな思いを込めて。
上手く笑えているか、不安だった。最後に冬夜の顔を見たかったけど、見たら泣いてしまいそうで、できなかった。
これからはもう、冬夜とは会わない。
そう決意した。
「……もう、いいから」
静かな空気を震わせた声は、低かった。冷たくて、冷たくて、僕の精一杯の我慢も、続きそうにない。
「ちゃんと1人で部屋まで帰れるよな?」
「……」
あぁ、本当にここでお別れなんだ。
せめて彼が出ていくまでは、泣かないでいよう。これが最後の僕の意地。
震えそうで声を出せないのが情けない。
振り返ることもなく出ていった彼の背と、後を追うように静かに閉まるドア。
ポタリと落ちた雫が、古いけれど質のいい絨毯を濡らす。ポタポタと徐々に色の変わっていくそれは、僕みたいだった。
「ふっ、、うぅぅ、、、ひっぐ」
嫌われちゃったかな
最後の冷たい声を思い出して、悲しくなる。
当たり前だ。冬夜は僕を信じてくれてたのに。
僕だって冬夜を信じられなかったわけじゃない。ただ、幸せになってほしいだけ。
戦争になったら、冬夜もきっと行かなきゃいけない。だって、御門の当主だから。
きっと冬夜なら、他にもいい人が見つかる。こんなところで、無駄にしていい命じゃない。
こんなのただの言い訳だって言われたらどうしようもないけど…。
でも悲しいな。
こんな別れ方をするなら、記憶なんて戻らなくてよかった。ずっと出会わないままの僕だったら、こんな思いをすることはなかった。
でも、あのあったかい気持ちを、知ることもなかったんだろうな。
静かな部屋に、僕の声だけが響く。
このまま消えちゃわないかな。
止まらない嗚咽のせいで、呼吸ができない。苦しくて苦しくて、このまま死んでしまいたいのに僕の体は酸素を求め続ける。
こんなになるまで好きだったんだな
きっとこんなに愛せる人は、他にはいない。
最悪な出会い。たくさんの喧嘩。多分いいカップルじゃあなかったのかもしれない。
だけどずっとずっと、愛してる
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