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追放
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「春陽さん!冬夜さんが飛び出して行ってしまって……」
え?冬夜が?
さっきウリエラの様子がおかしかったのとなにか関係があるんだろうか
「下界に戻るって言って去っていってしまったので今どこにいるか分からないんですけど……」
多分冬夜のことだから、家には帰れると思う。だけどそれよりなにより、ウリエラが心配だった。
「ウリエラも一緒ですよね?それって……」
「いいえ、それがウリエラくんは置いていかれたみたいで」
また喧嘩でもしたのか?
さっきまでの様子を見る限り、そんな風には思えない。ウリエラが何故か落ち込んだみたいだったのは気にかかるけど、それが直接関係あるのか……。
とにかくウリエラに話を聞かないと始まらない。
「じゃあウリエラに話を聞かないと!」
「彼の姿も見当たらないんです。ただ防犯のためにつけているカメラに冬夜さんが1人で映ったってだけなので」
ウリエラもいないけど冬夜と一緒じゃない?
僕には創汰さんが何かを隠しているような気がしてならない。
だけどそれを確認する術を持たない僕達は、追求してもかわされるだけだった。
「とにかく冬夜を追いかけてみるしかなさそうですね」
怪しいけれど、今はそれしか道がないのだから。
「私は……いえ、なんでもありません。行きましょうか」
何かを言いかけた灰吏さんも、多分僕と同じ違和感を抱いていたんだと思う。
言いかけた言葉を消さなければならなかった理由を、僕に知る余地はない。
「もし冬夜さんが見つかったら、俺にも連絡くださいね。心配してるんですから!」
幸い荷物が少なかったのと、もうすぐ帰るつもりだったのとで家に帰るための仕度にはあまり時間を要しなかった。
外には出られないから、とエレベーターまで送りに来てくれた創汰さんは、笑顔だった。
それに応えるように、僕も笑顔を見せる。
エレベーターのボタンを押したのはミカさん。帰りも僕達を家まで送り届けてくれるらしい。
ゆっくりと閉じていくドアの向こう、創汰さんの表情は変わらなかった。
2度目の高速エレベーターはやはり慣れなくて、耳がキーンとする。必死に唾を飲み込む僕を、灰吏さんは静かに見つめている。
来る時と同じように車に乗り込んだ。違うのは冬夜がいないことだけ。
来た時と同じ道を辿り、門番の横をすり抜ける。
車の中は何故か来た時以上の緊張感が漂う。灰吏さんとミカさんの間が特に顕著。
そして僕と灰吏さんだけならばあったであろう会話も、沈黙に潰される。
急いで出ていかざるを得なかった為に働く暇のなかった頭にはこの静寂は嬉しかった。
今になって初めて、次々と浮かんでくる怪しい部分。
でももう遅い。
天界には招待状がないと、入れないから
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