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ワーウルフ
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「お兄さんも魔族みたいやしなぁ?」
たった耳がピクピクと周囲の音を確認するように、絶えず動いている。
「なんで俺が魔族だと?」
「そんなもんアホでも分かるわ。やってお兄さんこの暗闇の中をふっつーに歩いとったやろ?天使にもそんな芸当はできひんよ。人間なんてもってのほか……ってな。どや、名推理やと思わん?」
俺探偵なれるんとちゃう?なんてケラケラと笑うその男の姿はどうにも頭が弱そうで、そしてその出で立ちが、それを助長している。
全裸なのだ。
「じゃあ探偵さん、そんな推理より先に服探した方がいいんじゃねぇの?」
一瞬ポカンとしたあと、思い出したらしい。
「べっ別に誰にも見られへんもん!自分じゃ見えへんし……」
「俺には全部見えてんだけどな?」
急に前を隠し出したあたり、俺が見えてるってさっき言ったことも忘れてたらしい。
やっぱり馬鹿か
でも今、周囲に服はないらしく、手で抑えたまま、蹲っている。
「あ、そういえばお兄さんなんでここに来たん?って言ってもアイツしかおらんか……」
「アイツって?」
「神崎とか言う胡散臭い野郎やって。もしかしてお兄さん他の理由でここに来た!?」
あぁ、やっぱりこの部屋は神崎の管轄だったのか。
「いや、神崎が原因なんだけど、」
「圭君、大丈夫?」
さっき聞こえた女の声。
甘くて、どこか抜けたような女特有のそれは、けれども媚を売るようなイヤらしさがない。
「大丈夫やでー。ちょっと待っとってなー?」
背後にかける声は優しい。この二人の関係は謎だ。
そのままひたひたと裸足のまま歩いていく男の背中を見送る。
さっき見えないって言ってたけれど、何の迷いもなく道を歩いていく。あたかも全てが見ているように。危なげなく。
「何しとるん?お兄さん今どうしようもないんやろ?こっち来ぃ。出るまでの間くらい仲良くしよ?」
さっきの部屋から声が掛かる。行っていいものか悩んだけれど、ここで断るのも悪い。
「えっと、こんにちは」
声の主は綺麗な黒い髪を下に流した女性だった。男とは対照的に、今はきちんと服を着ている。
「こんにちは。災難でしたね、こんなところに」
こちらも男とは対照的に、穏やかで、物静かな感じ。
「あっ、自己紹介まだやったな!俺は圭翔。圭って呼んでくれてかまへんよ。あと、魔族でワーウルフ」
ワーウルフね。なるほど獣の耳はそのせいか
「桜珂です。人間なんですけれど、魔族の血も入っているみたいで。曾祖母がサキュバスらしいです。よろしくお願いしますね」
「俺は冬夜。種族はヴァンパイア。よろしく」
端的な自己紹介が終わると、親切にも彼らは持っている情報を俺にくれた。
そこには最悪の情報が、俺の期待を粉々に打ち砕く形で存在したのだけれど。
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