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三
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突き放すように放った言葉が部屋の温度を下げる。
「何故だ」
「お前には、関係のないことだ」
そう言って、部屋から出て行こうと凪は立ち上がり、障子の前に立つ、男の横を通り過ぎようとする。しかし、不意に訪れた立ち眩みに身体が傾く。
――倒れる。
身体の自由が利かず、体勢を整えることができそうにないと判断した凪は、直ぐに訪れるであろう、衝撃に備えようと目を閉じた。
けれど、衝撃が訪れることはなく、腹に温かさを感じる。
目を開けると、男の太く、筋肉質な腕に凪の身体は支えられていた。
「こんな身体で、どこに行くつもりだ」
「何処だって構わないだろ。離せっ」
男の腕から逃れようともがくが、元々ある体格差に加え、衰弱しているこの身体では中々難しいものだった。
「いいや、離さない」
「――っ!」
しかも男は、意地でも離さないつもりらしい。そんな男に、凪は痺れを切らす。
「っ……」
つう――と、男の腕から赤い液体が流れ落ちる。
男の腕に、凪は噛みついていた。一切の手加減をすることもなく、ともすれば噛み千切らんばかりの勢いで食らいついていた。
ポタポタと、男の血が畳に落ち、吸い込まれていく。
凪の鋭い歯が、徐々に男の腕へと、より深く食い込むのに比例して、畳に広がる赤い染みも範囲を広げる。
それでも、男が凪を離すことはなかった。
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