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六
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◆◆◆◆◆
チュンチュンと何処かで囀る鳥の声が耳を刺激する。障子から差す、明るい光に凪は身じろぎをした。
薄らと目を開けると、畳が目に入る。ぱちぱちと瞬きを繰り返し、まだ覚め切らない頭で考える。
そうだ、俺はあの紅夜という鬼に助けられたんだった――。
思い出すのと同時に上体を起こす。畳の上で寝てしまったせいか、少し節々が痛いが、久々にゆっくりと睡眠をとれたおかげで、体が軽い。
それでも空腹は回復するわけではなく、腹から聞こえる音に思わず固まってしまった。
「……」
昨日までは気にもしなかった腹の虫は、気づいてしまえば、どうしようもない空腹感に襲われる。そんな自分の変化に、凪は戸惑った。
ガタガタと音がして障子が開かれる。其方に目を向けると、不機嫌そうに目を細めた紅夜が立っていた。手には何やら椀を持っている。
「そのまま、寝たのか」
「悪いか」
どうやら、布団も引かずに畳の上で寝ていた事を、気にしているらしい。
「風を引くぞ」
「今更だろ」
「はぁ……畳の後がついてる」
凪の右頬についた赤い痕を指差しながら、凪の傍に紅夜は腰かける。
「粥を待ってきたんだが、食べられそうか?」
丁度、お腹が空いていた所だ。指摘された痕を、気にしながらも素直に頷くと、椀を差し出され受け取る。
中には白くどろりとした米に、解された梅干が少々乗せられていた。まだ温かいらしく、じんわりと熱が椀を伝い手に渡ってくる。何故か、その温かさが心に染みた。
男から受け取った匙で、掬った米を口に運ぶ。少しの塩気と、梅干の酸っぱい味が口の中に広がった。なんでもない粥のはずなのに、久々に食べた食事のせいかとても美味しく感じる。
凪は黙々と、粥を口に運んだ。その間、何故か嬉しそうに紅夜が此方を見ていたが、あえてそれには触れずに――。
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