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九
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部屋を出て、紅夜に連れられるまま厠や台所といった、大まかな部屋を案内された。屋敷はとても広いらしく、他にも様々な部屋があるようだが、覚えられる気はしない。
何より静けさに満ちていた夜の屋敷とは違い、明るくなった屋敷は随分と賑やかだった。
「おはようございます! 紅夜さん!」
「ああ、おはよう」
「あれ? 新入りっすか?」
台所を出た所で、話しかけてきたのは一つ目の妖怪だった。
「猫又の凪だ。仲良くしてやってくれ」
「勿論ですよ!」
二言三言、会話を交わして一つ目と別れる。このやり取りも何度目になるのか分からない。
此処に来るだけで、色んな妖怪と出くわした。それは人型であったり、一目で妖怪と分かるような姿だったりと、多種多様だ。そんな奴らに、一々声を掛けられるので、凪はうんざりしていた。
「随分と、慕われてるんだな。皆、お前が助けた奴か?」
「全員ではないさ。気づいたら、居座ってた奴もいる」
少し、皮肉を込めて言うが、紅夜には伝わっていないようだ。
「自由なんだな」
「屋敷の主がそんな奴だからな」
「どんな奴なんだ?」
そう言えば、屋敷の主がどんな者なのか聞いていなかった。
「そうだな……」
少し考え込んで、紅夜が口を開く。
「変わり者だな」
「……」
それをお前が言うのかと、思うが口にしない。紅夜が言うからには、相当な変人なのだろうか。少し、不安を覚える。
「それから、嘘が通用しない」
「……?」
それは、どういう意味なのだろうか。疑問を覚えて聞こうとするが、突然立ち止まった紅夜に、出かかった言葉は口に出す前に飲み込む事になる。
「心、居るか?」
閉めきられた障子戸の前で、紅夜が中に居るであろう者へと声を掛ける。
「紅坊かい? お入り」
中からは、意外にも若い女の声が返ってきた。その声を合図に、紅夜が障子を開ける。
赤を基調とした家具で彩られた部屋の中央には、少女が一人、座布団の上に座っていた。
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