アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
十
-
てっきり、自分や紅夜よりも老齢の者かと思っていたのに、部屋の主は自分より随分と幼く見える少女。妖を見た目で判断するのは可笑しな話かもしれないが、正直、拍子抜けだった。
「儂の見た目が意外かのう?」
そんな凪に部屋と同じ、赤い着物の袖を口元にやり、クツクツと少女は笑う。その声と呼応するかのように、短い赤茶色の髪がサラサラと揺れた。
「いや……」
どう答えて良いのか分からず、口籠る。
「遠慮せんでも良いぞ」
楽し気に、少女は凪を見やった。真っすぐと、凪の瞳を射抜く、少女の黒い瞳はどこまでも澄んでいて居心地の悪さを感じる。
「言っただろう、心に嘘は通じないと」
そんな凪の手助けをする様に、紅夜が会話に加わる。
「覚だからな」
「っ!」
紅夜の言葉を聞いた凪は思わず息を飲みこむ。
――覚。聞いた事がある。確か、他者の心を読む事ができる妖だ。
「そんなに、驚かれると照れるのう……」
赤く染まった頬に手をやり、くねくねと身を捩らせる少女に妙な納得感を覚える。確かに、変わった者の様だ。
「ふむ、何やら、紅坊が要らぬことを言ったようだのう……」
「さあ、な」
笑顔のまま、紅夜の方を向く少女に、お道化た様に紅夜は肩を竦める。
「まぁ、良い。して、其方が凪で良いのかのう?」
紅夜の事は、今は置いておく事にしたのか、少女は凪に問いかける。それに凪はこくりと、頷いた。
「ふむ……それにしても、これはまた、大層な者を連れてきおったな紅坊」
凪をじっと見つめ、意味深な呟きを少女は零した。きっと、凪の事は全て見透かされているのだろう。かと言って、別段気にするつもりはなかった。軽蔑され、追い出されるなら、それはそれで問題ない。そもそも、自分から進んで此処に来たわけでもないのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 12