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公園と桜とボク2
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――翌日。
部屋の中は寒かったけど、外に出ると日差しがあるおかげで暖かかった。
かーくんの車に荷物を積み、いざ乗り込もうとする。
あれ? こういう時って助手席と後部座席、どっちに座ればいいんだろう。
大学の時からの友達と三人で乗る時は適当だし、アプリで会った人とどこかへ行くなら助手席に座っていた。だけど中には助手席は彼女専用にしている人も居るらしい。
当たり前のように助手席に座ったら、彼女面していると思われるかも――
いつの間にか先に車に乗っていたかーくんが、窓ガラスを下ろしてボクの顔を覗きこんだ 。
「昨日の言葉は撤回。トモさん、何の進歩もしてないね。いいから前に乗って」
「ふへっ! は、はい……!」
かーくんを不機嫌にさせないよう、慌てて乗り込む。
「よろしい」
シートベルトに気を取られていたので、かーくんの表情は見逃した。声は少しだけ、柔らかかった気がする。
近くのインターから高速道路に乗り、山を越えて、海のほうへ、海のほうへと向かう。雪が少ない分、海に近い地域は桜が咲くのが早い。
かーくんはやっぱり、運転している姿もかっこいいなぁ。
見とれていると、
「ねぇ、おやつは?」
かーくんが口を開け、唐揚げを要求してきた。家を出てまだ30分も経ってないんだけどな。口を開けたまま待っているかーくんは、ひな鳥みたいで可愛い。
ボクは手を伸ばし、後部座席からタッパー入りのバッグをたぐり寄せた。
おやつ用の唐揚げは、少し変わり種のものを作ってみた。普段は定番のものしか作らないので、かーくんがどんな反応をするかはわからない。
「柚子胡椒と、韓国風の辛いやつと、塩レモン、どれがいいですか?」
「さっぱりしてるのから」
「じゃあ、塩レモンですね」
フォークに刺して口元に運ぶと、かーくんはパクンと唐揚げを口にした。不味いと言われたらどうしようと内心ドキドキだ。
「さっぱりしてて、食べ始めには丁度いいな。次は柚子胡椒」
柚子胡椒の次は、コチュジャンとケチャップがベースのヤンニョムチキンという韓国風の唐揚げ。そして、口直しにと塩レモンに戻り、また柚子胡椒、ヤンニョムチキン、塩レモンと繰り返す。
「あ、無くなった」
ボクが言うのが早いか、ETCゲートを潜るのが早いか。
“料金は――円です”
高速道路から一般道へおりると、いきなり大きい通りに出た。
この辺りには初めてきた。不便な立地だし、大きな街にしてはショッピングモールがあるわけでもなく、観光する場所もない。おそらく県内でも足を踏み入れたことのない人はたくさんいるだろう。
ただ、桜だけは全国放送の情報番組に取り上げられるほど有名だ。
「もうそれほど遠くない」
かーくんは来たことがあるのか、カーナビも見ずにそう言った。
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