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公園と桜とボク3
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昨日から観桜会の始まっている。公園の駐車場は、すでにほとんどが埋まっていた。第二駐車場として指定されていた河川敷に車を停め、会場まで歩く。
「まだ寒いのに、花見にくるやつがこんなに居ると思ってなかった」
かーくんはボクの手から飲み物の入ったビニール袋を奪い、先を歩く。綺麗な指にずしりと重いビニール袋が食い込んでいた。
別に、女の子じゃないんだから気にしてくれなくてもいいのになぁ。なんて素直じゃないことを心の中で思う。
ボクは唐揚げの入った保冷バッグと地面に敷くシートを手に、かーくんの背中を追いかけた。
一体何十年前から植わっているんだろう。学校の桜とは比べものにならないほど立派な幹の桜が、公園内の遊歩道を挟んで延々と植わっていた。
満開になれば、それはもう素晴らしい光景になるに違いない。
その様子を想像すると、少し怖いような気がした。迫りくる桜は圧迫感があって苦手だ。自らの美しさを知り、褒め称えられるのが当然といったような、傲慢さも感じる。
「本当に、今くらいが丁度良かったかもしれないな」
「そうですね」
何が丁度良いのかわからないまま、ボクは頷いた。桜が怖いなんて、きっと誰にもわかってもらえない。特にかーくんみたいに誰からも羨まれる容姿の人にはわかってもらえるわけがない。
かーくんは桜を見上げ、呟いた。
「人も少ないし、落ち着いて見られる。それに、ぽつぽつ咲いてるくらいが押し付けがましくなくていい」
苦虫を噛み潰したような顔をしているかーくんは、何か桜に嫌な思い出があるように思えた。
そういえば元カノのことを話す時、嬉々として悪口を言ったりはしないけど、あまり良い感情は持ってなさそうだった。
かーくんの元カノは、桜みたいに綺麗で、どこか傲慢なところのある人だったのかもしれない。
その人に嫌気が差したからこそ、今ボクと並んで歩いてくれている。積極的に好きになってもらえたわけじゃなくても、かーくんの隣にいれることが嬉しかった。
「ボクも、今日で良かったです」
巡り合わせとは、すごく不思議なものだ。何か順番が違ったら、同じ結果にはなっていない。
嬉しくて、嬉しくて、スキップしそうになる。確実に変な人に思われるから、やめておいた。
適当な所にシートを広げて、荷物を置く。
ちらちらと保冷バッグに視線を走らせるかーくんがおかしくて、意地悪したくなった。
わざとゆっくり荷物をほどき、目の端でかーくんのそわそわした様子を眺める。小さなシートにちょこんと座るかーくんは、ほんの少し拗ねた顔をしていた。
感情が分かりにくいなんて思っていたのはなんだったんだろう。
たっぷり勿体つけてタッパーを開ければ、かーくんの口元が微かに上がった。
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