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不毛な関係と恋心4
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洗って、解して。
パートナーにしてもらったことなんて無くて、いつも自分で作業的にやってるな……なんて思うと虚しくなり、頭に渦巻きそうになった重いものを振り払うようにかぶりを振った。
脱衣所の鏡に映る、似合わないバスローブを羽織ったボクの姿は何だか間抜けだ。
(感情の伴わない行為をする以上に間抜けなことは無いか)
ため息を一つ吐いて、彼の元へ行く。
なんで彼を「彼」と呼んでいるかというと、彼がサイトで使っていた名前が「唐揚げ」なんていうふざけた名前だからだ。流石に唐揚げさんとは呼べない。
無駄な脂肪が一切付いてなさそうな体で、唐揚げが好きなんだろうか。
「上がったの?」
ボクはまた立ち尽くしていたみたいで、彼に声をかけられ我に返った。
「はいっ、すみません、あのっ、名前、教えてもらってもいいですかっ、本名じゃなくていいので……!」
やはり何だか緊張して、まともに喋ることが出来ない。
「ああ、じゃあ、かー……ちゃんはおかしいし、かー……さんもおかしいし、かーくんで」
(絶対、唐揚げからとったな……!)
「唐揚げ、お好きなんですね」
「え?」
「いえ、ナンデモナイデス」
余計なことまで話してしまったかもしれない。でも、なんだかかーくんって可愛いかも。名前もそうだけど、言動が。
心の中にぽわんとした物が浮かんだ。
長谷川さんのことが好きなのに、簡単に心を揺れ動かす自分が恥ずかしくなって、ボクは腕立て伏せを始める。
体育大時代の友人で自衛隊で働いているやつが、眠くなったり、ストレスが溜まると腕立て伏せをするのでボクもつられて癖になっていた。
「何してるの?」
「……えっと、腕立て伏せです」
一人でハァハァ言ってたら怪しすぎる。素直に白状した。
「眠い?」
第一声でその言葉が出てきて、かーくんの職業が予想出来た。自衛官か、警察官か、消防士とか、そんな所だろう。
“眠いから腕立て伏せをする”というのは一般的ではないはずだ。
「眠い、わけじゃないですけど……」
恋愛対象として心が揺らいだなんて、ノンケのかーくんにはとても言えない。
「……ふぅん」
あまり表情を崩さないと思っていたかーくんの頬がほんの少しだけ緩んだ気がして、また一つ、ぽわんと温かいものが心に浮かんだ。
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