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不毛な関係と恋心14
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◇◇◇
目を覚ましたらかーくんの姿は無くて、ガラス製のソファーテーブルの上に、綺麗に向きを揃えたお札が置いてあった。
(……ボクが払うって言ったのに)
深い意味は無いって分かってるけど、何だか、ただの割り切った関係じゃないみたいで嬉しくなる。
かーくんのことを考えると胸がズキズキするのに、それが不快じゃない。
ボクは本当にかーくんに恋をしたんだなぁ。叶わないとは知りつつも、ぽわんと心に浮かんだ気持ちを手放したくはなかった。
朝まではまだ時間があるので、かーくんの余韻に浸ったまま眠りたい。布団に深く潜り込み、枕をギュウッと抱きしめた。
◇
年の瀬も近付いて来た頃、廊下ですれ違った厚生部の若い女性教諭に声をかけられた。
「三木先生ぇ~、お願いがあるんですけどぉ~」
「……何でしょう?」
ボクは足を止め、妙にしなを作りながら猫なで声を発する先生に向き合う。
「来週、忘年会があるじゃないですか~」
「そういえばそうですね。先生もお忙しいのに取りまとめして頂いてすみません、ありがとうございます」
「……で、お願いなんですけど」
「はい?」
「長谷川さん、今回も不参加みたいで……。三木先生から声をかけてもらえませんか~? ほら、三木先生が一番年も近いし」
「はぁ……」
ボクは相槌を打つ。
何となく打った相槌だったけど、先生はボクが承諾したものだと思ったらしい。出欠確認の用紙が挟まれたクリップボードを手渡された。ルンルンで去っていく先生を見て、ため息が出る。
(長谷川さんかぁ……)
長谷川さんの前に警備員をしていたおじさん(おじいちゃんに近い)は、よく飲み会に参加していたけれど、長谷川さんは歓迎会以降一度も顔を見せたことはない。
元々そういう場が好きでないのか、職種が違うから遠慮しているのかは分からないものの、とても参加してくれるようには思えないなぁ。
それに長谷川さんの顔を見ると、どうしてもかーくんのことを思い出して変な気持ちになってしまうから、顔を合わせるのが気まずい。
もちろん長谷川さんが悪いんじゃなくて、100%ボクの都合だけど。
あれこれと考えている内に警備室の前に着いていた。
声をかけて、一応体裁を取り繕うために説得すればいいだけだ。断られたら断られたで仕方ない。そうは思うものの、ボクは扉に手をかけたまま固まった。
開ける勇気が出ない。
説得出来る自信が無いからじゃなくて、長谷川さんとどんな顔をして話せばいいのか分からなくて。
――扉が音を立てて開いた。
出てきたのは、もちろん長谷川さんだ。
「何か用ですか?」
ボクに問いかけてくる長谷川さんの声は、やっぱりかーくんにそっくりで、胸がトクンと高鳴った。
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