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はじまりはとても単純で
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「ほら、来いよ」
部屋に入れず固まっている俺に
彼はそう言って、急き立てた。
でも俺は、そのたった一歩が踏み出せない。
もし俺がこの扉をくぐってしまったら
もう二度と、戻ることができなくなる
そんな不安が俺の足を踏みとどめた。
彼はいつまでも動く気配のない俺に
苛立ちを隠すことなく
頭をガシガシとかきむしった。
そして、深いため息をつく。
彼は腰に手をあて、しばらく
なにかを考えるような素振りを見せると
顔をあげて、俺の目を見据えた。
俺はなにかに取り憑かれたように、
彼から目を離すことができなかった。
────ああ、どうしよう。
もう俺は彼から逃れることができないかもしれない。
今が本当に最後の機会だと思った。でも、
なぜか、体が、動かない。
呆然と立ちすくむ俺を見ていた彼だったが
思い出したかのように
また動き出した。
そして、部屋の電気を薄暗く変え、
彼はベッドに腰かける。
────一体、何をする気なんだ
俺は無意識のうちに
彼を、目で追っていた。
俺はいつの間にか彼の罠に掛かっていたのだろう。
この短い時間の中で。
彼は、何の躊躇もなく、
自分のTシャツを脱ぎ捨てた。
俺は息を飲む
彼は、ゆっくりと、指を
自分の腹から胸、腰へと滑らせた。
「っ.....、」
俺はその指の触れた体に魅了されていた。
一切の無駄のない筋肉
とても男らしい胸元
広い肩幅、いつもは隠された鎖骨。
そのどれもが俺の心をくすぐり、惑わせた。
彼の指が唇へと移動する
俺の喉がゴクリと鳴った。
「来いよ」
艶やかな彼の声は、俺の理性を壊すには
十分すぎるものだった。
────彼に触れたい
俺の思考はままならず、ついに俺は
部屋に足を踏み入れた。
ほのかな甘い香りが鼻孔をくすぐる。
俺の脳はとろけて、
彼以外、何も考えられなくなっていた。
薄暗い灯りに照らされた彼の体が俺を呼ぶ
彼が口角を、ニヤリとつり上げた。
彼は腕を広げて、
俺が来るのを、待っている
俺の口から吐息が零れた。
────彼は麻薬だ
一度近づけばもう逃げられない。
何度も繰り返してしまえば、よりいっそう、離れることができなくなる。
俺は初めて彼と出会ったときから
墜ちていく運命が、決まっていたのかも、しれない。
俺の体は彼の腕の中に収まった。
彼は満足そうに微笑むと
俺の額に口付けを落とす。
────あとは、墜ちていくだけならば、もう、何処までも。
俺は彼のからだをギュッと抱き締めた。
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