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道の往来で突然、後ろから肩をグッと掴まれた。
ビックリして振り返ると、背の高いがっしりとした体格のその人は、胸の辺りまでしか見えなかった。
健康そうな褐色‥
「道を聞きたい。ここへは、どう行けばいい?」
今日は、初対面をよく引き当てる日だ。
さっきは、道の反対から駆けてくる男の子が全然前を見もしないで走ってくるから、何とか正面で抱きしめて捕まえた。
危ないよ、と優しく注意してたら息を切らして追ってきたお母さんが、やっと捕まえられたと、過剰なくらいお礼を言われた。
やれやれと、ズボンの膝辺りについた汚れを払いながら立ち上がり、一段落したところで、今度は外人さん‥か。
威圧感ある低音、よく通るはっきりとした声に見上げると、艶のある褐色の肌に濡れたような、漆黒の短髪。
上は薄く下は厚い唇。鼻筋の通った鼻、目は‥綺麗なグリーン。
どれもこれも自己主張の激しそうなパーツだが、顔全体で見ると不思議なことにしっくりお互いを引き立たせていた。
怖いくらいな美しさを持つ、野性的な男性だった。
白いコットンTシャツに、黒のテーラードジャケットは、前をはだけさせても品よく纏まっている。
シワの殆ど無い、アイスグレーのパンツってのもカッコイイし、黒の皮靴も、よく手入れされて見るからに高そう。
差し出された手に持っていた地図が書いてあるパンフレットも、なんかおしゃれに見える。
鞄とか、持たないのかな。
あれ、俺はいつからおス○とピー○になったんだよ。
とは言え、辛口でもこの人にダメ出し出来る奴は、そうそういないと思う。
ここまで、脳内で二秒程。
まぁとにかく、これが外人パワーってやつかと圧倒されながら、それでも目は離せなくて上から下まで、実況解説出来そうなほど、しっかりじっくり見とれながら、ジリジリ後退りして、口を開いて出た言葉は…
「アイム、ノットスピークイングリッシュ‥‥」
綺麗に整った、形のいい眉を片方だけ上げて(うわっこの表情すら綺麗だな、なんて魅入ってしまいながら)彼はまた、聞いてきた。
「ん?日本人では、ないのか?」
「い、イエース、アイアムジャパニーズ‥あれ?」
話しかけられて、テンパっていたが、よくよく聞けば、日本語で話し掛けられていた事に気がついた。
あ、しかも道を聞かれてるし、助けてほしそうじゃん。
って、全然困ってそうにも、見えないけれど。
外人てだけで、いきなり突き放してしまったのが申し訳なくて、「アイム、そ、ソーリー」って呟いたら、フッと笑ってくれた。
その笑顔に、さっきまでの威圧感から解放されて、キュンと胸が苦しくなった。
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