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「昨日言ってた新しいお友達を、もううちに連れてきたんだね。ウェルカム!ようこそ。士恩の父です。マイネムイーズ、コウタソノムラァー。」何故か右手を差し出し、ハミドも戸惑いながら手を出すと握手をした。
「父さん、ハミドは日本語ペラペラだよ。」
「分かってるけど、一度は海外っぽい挨拶をしてみたかったんだよー」
はぁ、でも、このノリは重い空気より正直助かるなと思いながら、チラリとハミドを見ると‥あれ、嬉しそうにしている‥?
「ハミド君の持ってきてくれたこのドーナツ、美味しいねー。えっ?士恩も好きなのかい。父さんにも今度買ってきてよー」父さんは機嫌よくペラペラしゃべり通しだ。
ハミドは、ふっと笑うと俺に囁いた。
「シオンの父上は、とても優しそうだ。」
胸が、キュンと跳ねる。他者をねじ伏せるような近寄りがたさがあるのに、そんな笑顔で微笑まれたら勘違いしてしまう。
その声を聞き逃さなかった父さんが俄然調子に乗り出す。
「ハミド君、分かってくれるかい。この子は母親を子供の頃に無くしてね‥ってまだ全然子供なんだけど。」「ちょっと!」「ふふっ、でね、俺は父親だけど、母親の役目もしなきゃって思ったんだよね。だから、こうして威厳は無いんだけど、仲良くなんでも話せる家族にしたくてね。」
「シオンの思いやりは、ここで育ったのだな。」
父さんは、号泣しそうな勢いでハミドの手を取って、また握手する。なんだろう、これが父さんがやりたかった海外っぽいコミュニケーションなんだろうか。
「えー、なんでそんな嬉しいこと言ってくれるのー。えーハミド君も飲む?ビールは日本のだけどー。焼酎も日本酒も日本のだよねぇ。あとは‥」
「いや、結構。17歳の飲酒は日本では禁止されているはずだ。」
父さんがぎょっとした顔を作ると、ハミドは昨日と同じ嫌そうな顔をしていた。やっぱり親子なんだね、俺達。
「うっそー!君は士恩のいっこ上!今どきの子はハミド君みたいのほうがスタンダードなのかな。士恩ってもしかして発育遅れてるほう!?」
「もぉう、父さんっ!」「でさ、でさー、ハミド君の家族は?ご両親はお元気なの?」
「父は本国にいる。母親は俺を産んで直ぐに亡くなったので、正妻のもとで育てられた。」
父さんはサッと青くなり「あっ‥ごめんね、気まずかったら話さなくていいよ‥。」と謝ったが、これには全く気にしていないようで「謝る事は無い。別に構わないが。俺は3人兄弟の末っ子で、母親は全員違う。次男の母親の正妻はとても賢い女性で、今でも俺はあの人のことを本当の母のように思っている。」
う、なんだろう、聞いているだけでここは複雑な家庭そうだ。
父さんはさっきまでのハイペーストークもぐぐっと落ち込んで、静かに酒を飲みだした。夜も更けたので俺はハミドを駅まで送ると行って家を出た。
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