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side ハミド
俺は果てたあと、急に正気に戻ったようだ。
目の前ではシオンが意識を失い、全身から力を抜いていた。慌てて口元に手をあて、耳を近づけると、規則正しい呼吸音が聴こえてホッと胸を撫でおろす。
ひくっひくっと、痙攣した瞼も、涙の跡も、腫れ上がった唇も、涎の跡も、汗も、めくれあがった蕾も、あれもこれも‥‥
俺が汚してしまったシオンの身体を、ゆっくり清めて行く。
先程の座薬と、塗り薬。
シオンが眠っていたこともあり、今度はすんなりと成功した。
Special と、再び兄上の字で書いてある箱には、なぜか湿布が入っていた。
もしかしたら、これも貼っておいたほうがいいのだろうか?
足の裏に貼り、様子を見る事にしたら気持ち良さそうに、「ふふっ」と笑ったので正解か。
寝返りを打って腰を手で、さすり出したので手をそっと離し押してみて腰の張りの強いところに貼ると、今度はこちらに貼れとばかりに反対へ寝返りを打った。
両方に貼ると満足したのか、ふにゃっと口を弛ませ、仰向けになる。
思わず口元に手をあて悶えてしまった。
なんとも愛らしいこと、この上無い。
掛け布団を胸まで掛けてやる。
ご苦労だと言わんばかりにコクコク頷くシオンの寝顔にキスを落とすと部屋を出て、シャワールームに入った。
シャワーを浴びながら、今後のことを考える。
やっと落ち着いた、というより飢餓感が薄らいだといえよう。
シオンを求める気持ちが、日に日に狂気を孕んでくる。
冷蔵庫にあるミネラルウォーターを取り出し、ようやく落ち着いて物事を整理しようとした‥
その瞬間、カリフからの着信があった。
『こんな時間に、一体なんの用だ。』
『予定外の事態が入りましたので、早急にご報告を。』
切羽詰まる声は聞いていていい気味になったが、続く言葉に胸が熱くなった。
『先程フランスで出走された大レースで、全くの圏外と目されていた陛下の所有馬が一着になり、馬も陛下にとっても、初の優勝をされました。牧場主は、ハミド様もご存知の‥‥』
『テルの馬か!』
『はい、あの方にとりましては日本での生産馬主として初の、と言うことになります。
今、フランスでは歓喜の声が上がっております。本来であれば、ハミド殿下はスケジュールを全て蹴ってでも、現地に飛んで陛下や皆様とこの勝利を分かち合いにいくような状況にも関わらず‥』
そうだ、彼の執念が生んだものに違いない‥。このニュースは、むしろテルと、父上と、共に現地で分かち合いたかった。
そうか、あのテレビ電話は俺を誘うため‥?
あの時、余程俺は正気を失っていたようだ。
こんな事あり得ない。
二人で約束していたレースの日程すら、俺の頭から完全に抜け落ちていたなんて。
『これは、私の失態です。申し訳‥』
すかさず遮った
『謝るな! 失態等と、簡単に片付けるな。選択肢が無いなら、俺と取引をしろ。
この状況を見逃してやる代わりに、シオンについてお前にやってもらいたい事がある。』
『お許しいただけるのであれば、私に拒否権はございません。』
『お前の忠誠心を疑う俺もどうかしていた。
シオンに、俺の身分を一切明かさずにいる事に決めた。いずれ明かさねばならぬこともあるだろうが、今はその時ではない。
シオンの存在は公には出さないが、お前を含め、ごく少数の腹心には、俺の将来の伴侶として身辺警護も含め、多少の泥水も飲んで貰う。』
『欲張りな、あなたらしい解答です。シオンに悟られぬよう、護衛ですか。当初からのあれは、運命だったのですね』
カリフの声は、とても晴れやかだった。
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