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ドハは運動男子で頭もいい。
日本語もペラペラだし、可愛い感じできっと人気も高いんだろう。
でも、最近ピリピリしていて、俺以外の人間と話をしているのは見たことが無い。
「おい、シオン。そこの解答、問題の捉え方、間違えてねーか?」
「はっ!いっけね。俺、数学が一瞬だけ好きになったのになぁ‥また苦手科目になっちった。」
図書室で、宿題をしていたら、ドハが来た。
別に本を読むわけでもなく俺の真向かいに座って顔を眺めている。
落ち着かないけど、知らんぷりして宿題を続けていると、解の、求め方を間違えている。
心ここに非ずだと、すかさず指摘されたようにも思える。
首元に手を持っていく‥あっ、そうだ。地球のネックレスはもうないんだっけ。そのまま襟を
掴み、溜息を吐く。
その様子を、じ‥っと見るドハ。
「言いたくねぇなら、聞かねぇけどさ。ここには誰も居ない。俺は‥そうだな、お前の悩みを聞く地蔵にでもなるか。吐き出したいコトあんなら吐き出せよ。」
「暗くなるような話だし、落ちも何も無い。クソ面白くもない話だ。」
「落ちとか気にして聞いたりする地蔵なんかいねーよ。話したいんなら、話せ。」
ドハの優しさに涙が出た。
俺はあの日見たことを、堰を切ったように話を始めた。冷たいハミド、恍惚としたお隣のシェザードさん、それを見ているカリフさん‥異様で、異質な狂気の空間‥。
ハミドに、返した地球のネックレス。
何もかもが、もう終わった。
ドハはふうっと溜息をつきながら外を見ていた。
もう秋風が吹き、涼しい。
昨日まであんなに暑かったのに、虫の声すら聴こえてきそうだ。
「俺、地蔵やめてシオンの話に入ってもいいか?」
「お、おぅ。なんだ。」
地蔵だから喋らずにいたってことか。
「よく分かんねーけどよ、カリフさんとハミドって、なんか普通の関係じゃねーと思うんだよな。その、恋愛とかじゃなくて。」
「うん、それは前にカリフさんに言われた事がある。ハミドは大事なんだって。友達じゃない、友達よりも‥」
「シオンからしたら、言い訳にもなんないのかも知れないけどよ、ハミドもハミドで、カリフさんに、そうする事情が何かあったのかもしれない。」
「理由も言わず、誤解も解かず、俺が罵って自宅の部屋に戻っても追いかけもせず、地球のネックレスだけは受け取った。」
「玄関出るまで、お前が居ることは知らなかったんだろう?呆然自失で、今どこで何してるかも分かってねーだろ。」
「そう、見えるか」
「第三者視点は、な。」
言われてみれば、おかしな点はいくつもある。
だいたい、俺だってカリフさんに監禁されてめちゃくちゃ怖かった。
ハミドがカリフさんの恋人がシェザードさんだとして‥‥いや、まさかお前ぇ!最低だなっ!
って事を考えたら、頭が痛くなってきた。
ドハが、なんか可哀想なものを見るように俺に言う。
「なっ、思い当たる事あんだろ?」
「思い当たりたくねーけど、聞く勇気は出てきたかもな。」
「おしおし、じゃあまぁ、ドーナツ奢ってやっから元気出せよ。」
「コーヒーも付けてくれ。」
「飲み過ぎると寝れねーぞ」
「そこまでお子ちゃまじゃねーよ!」
俺たちは荷物を纏めて帰り支度をした。
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