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「こちらのドーナツ、温めてポワッポワに致しますか?」
いつも感じの良い、店員さんが聞いてくる。
俺の心も、それなりに前向きになり、一週間ぶりに、食べ物の味を感じられた。
何日も何日も、何を食べてどう過ごしてきたかも思い出さないでいた。
父さんとも、久し振りに、毎日のように夕ご飯を食べていたのに、元気ないね〜と言って黙ってしまう程に俺の落ち込みようは酷かったから‥‥
しつこく無い甘さ。これを腹に入れたらコーヒーを飲もう。
「なんか、がっついてんな。も一個食うか?」
頬杖をつき、俺を眺めながらコーヒーを飲むドハも引いてる。
「固形物を久々に食べた気がすんだよなー!ドーナツってこんなうまかったんだな。」
「俺はシオンがドーナツ食ってるとこしか見たこと無いんだけどな。ひょろっちいのが、更に細くなって‥骨と皮になる前にもっと栄養あるもん食えよー。」
相変わらずの二の腕は、服の上からでも引き締まっているのが分かる。
「ドハってササミにプロテインとか掛けて食べてそうだよな。」
「何で俺、筋肉馬鹿みたいなキャラに仕立ててんだよ!文武両道、ドハさんだぞっ」
なははっ と、ちょっと元気になっていたら、
「ここに居ましたか!」
店内に勢いよく入ってきたのは見知った顔だ。
カリフさんがいつになく青ざめて俺達に駆け寄った。
「シオン!ハミドが、襲われて、倒れました!」
「か、カリフさん?流石の俺でも、それなりに学習能力はあるんです。」
顔が、引き攣る。
ハミドは、カリフさんに俺がいた事は話しをしたんだろうか‥‥
ドーナツをかじり、コーヒーを飲む。
申し訳ないけど、またあの媚薬部屋で仲直りなんて、単純な話ではない。
「今度は、本当に本当なのです!ゲンショー様が今、看病に当たっておられますが、状況はかなり悪いのです!」
状況は、かなり、悪い?
「信じて貰えないかも知れませんが、本当の事です。
ゲンショー様がお留守の間、一人で毎日滝に打たれ続け、昨日アレフの手下らしき暴漢に襲われて返り討ちにしたけれど、そこで誰彼構わず当たり散らし、ゲンショー様がお戻りになった時には、もう手がつけられない暴走状態になっておりました。皆で彼を必死に止めたのですが、ハミドは電池が切れたかのようにそのまま倒れ、高熱を出して‥‥‥」
カリフさんは一気にまくし立てると、俺に向き直りこう言った。
「お医者様が言うには、今夜が山場だと。生死を彷徨いながら、シオンの名をずっと呼んでいます。」
ドハと顔を、見合わせた。
どうやら、本当に倒れたらしい。
お寺に向かう車で、父さんに電話をすると、何故か、嬉しそうに行っておいでよーって許可も出た。
前に向き直ると、右前で運転をしているのはシェザードさん。申し訳無さそうに眉をハの字にしている。
車の中で事情を聞いた。
ハミドはカリフさんとシェザードさんの為にひと芝居売っていたが、行為に及んでいたのは、あの激しいナニを咥えさせられることだけ、あとは擦りつけたりしただけで、見た以上には何も無かったと。
ハミドは優しいから、なんだかんだでシェザードさんを優しくしては、いたらしい。
別にもう聞きたくないと思ったけれど、本格的に、浮気されたわけではないと知り、だいぶモヤモヤが晴れてきた。
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