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「なんでこんな帰ってくるの遅いの」
「え、ぁ、……ごめん。」
リビングに入るとそこには不機嫌さを丸出しにした恋人がいた。
「ごめんじゃないよ。なんでって、俺は聞いたの」
p.m.10:30
距離をつめてくる芹沢を前に俺はただ狼狽えることしか出来ない。
きっと殴られる。
大好きな人からまた殴られるんだ。
俺は舌を噛んでしまわないように理由を告げるのを止めて歯を食いしばった。
理由を告げたところで殴られることは変わらないし、優しくしてくれるわけでもない。
それならせめて芹沢の気をこれ以上損なわせないようにしよう。
「……何それ、言えないような理由なわけ」
違う、バイトだよ。
荷物取りにとか来てたのかもしれないけど、俺がいる時間に帰ってきたのは1ヶ月ぶりだし、まともに会話したのはきっと2ヶ月ぶりくらいだから知らないかもしれないけどさ。ちょっと前からバイトしてるんだよ、俺。
言ってしまいたい。
でも口を開いた瞬間に言いたくないなら言わなくていいよって殴られた事が前に何度かある。
俺は俯いて首を降る。
俺はお前が別れたいって言った時にこの部屋を出た後に必要な金を貯めたいんだ。
「別に俺も遊んでるし、歩だって遊んでたならそう言えばいいよ。女の子?男の子?どっちと何しててもいいけどさ、バレたくないならもっと上手にしなよ」
「……、ッ、遊んでない」
遊んでない、お前と一緒にすんな。
堂々と遊び歩いて来る者拒まず抱いて笑顔で愛を囁くようなお前と一緒にすんなよ。
「俺は、お金貯めたくてバイトしてるだけ」
顔は怖くてあげられないけど、言いたい放題言われるのは我慢ならない。
どんな顔で俺を見てるんだろう。
どうでもいい様な目で見下ろしてるのか。
それとも俺なんて眼中にも入ってないのか。
「へぇ、バイト。俺毎月お金渡してるよね?
大体、このマンション自体俺の家の持ち物だから家賃かかってないでしょ。」
「そうだけど、俺も高校生だし」
「何、家賃払いたいって?別に構わないけど、ここ高いから両親の遺産全部持ってかれた歩にはいくらバイトしてるからって払える額じゃないよ?」
分かってる。
取られたとはいえ、遺産の中から高校や進学に必要最低限の費用を出して貰ってることだけでも感謝してるんだ。
こんな俺じゃ払えないことくらい分かってるよ。
言っていいものなのだろうか。
芹沢と別れた後に必要なお金を貯めてる、なんて。
こんなこと言ってしまったら最後、早く貯めてね、なんて言われてしまわないだろうか。
「そりゃあ、こんなに立派な所、家賃払わなくても使わせてもらって感謝してる」
「じゃあ、なんで」
「…自分のお金くらいは自分で稼ぎたい、から」
「へぇ、俺の金は受け取りたくないってこと?」
「…うん、恋人とは同列でいたい」
恋人、本当に恋人なのか。
そう思っているのは俺だけかもしれない。
「養われたくないと、今まであげたお金は?」
「食費だけ貰って、残りは締まってある。
来月からはもうくれなくて大丈夫だから」
本当は月に5万も貰っていることに引け目を感じていた。
「あっそ、好きにしなよ」
そう言うと輝はソファに戻り雑誌を読み始める。
「……お風呂」
珍しく殴られなかったことへの安堵感から一つ息を零して自室に向かった。
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