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ショーケースの恋人
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pm9:00
とある雑居ビル。
エアコンだけが鳴り響く、
六畳ほどの休憩室。
休憩室といっても、そこには長机一台と、スタッキング用の椅子があるだけの空間。
千春(チハル)は
そこでずっと待機している。
開いていた文庫本を一旦閉じ、
時刻を確認する。
硬い背もたれが思いのほか
読書の集中力の邪魔をするんだなと、
思った矢先、彼のケータイが鳴った。
[5番 通op 15 ]
ケータイ画面を確認するや否や、
千春は席を立つ。
狭い廊下を渡り、その部屋に入る。
室内の広さは畳二畳ほど。
かなり
コンパクトな作りになっていて、
それにすっぽり収まるくらいの
カウチソファーが一脚、
向こうにむけて置かれている。
ソファーに腰かけると、正面はすぐ壁だ。だがそれは一面の鏡になっていた。
この異質な部屋に、
彼は何度か出入りしている。
最初千春は驚いたが、
服屋の豪華な試着室、とでも考えると
慣れるのは早かった。
部屋に入るなり
着ている衣服を脱ぎ、
用意したウィッグを装着する。
下着姿で
手際よく脱いだ服を
カバンにしまい込むと、
かたわらに取り出しておいた
チョーカーを首に巻いた。
顔を上げると
鏡にうつる自分が目に入る。
(はあ…、たまんないね。)
(たまんないくらい痛々しい…)
鏡を見ながらウィッグを整える。
ウィッグといっても
女装と言う訳ではない。
(てか、正直痛い)
(間違いなくキモイ。でも
….なんかクセになる…)
(それでもってこんな自己満に
需要がある世の中って…
マジでくるってるよな…)
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