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あれから 1年経った。
冴子は あの日のことを苦々しく思い出していた。
あの少し前 幼馴染みに偶然会って 離れがたくて 再び夕食を共にする約束を交わした。
幼馴染みは 結婚したとも してないとも 言い 連れを紹介したいと 言った。
冴子に相談したいとも。
頼られるのは嬉しい。
私を相談相手に選んだことを 感謝させてやりたい。
その夜幼馴染みが連れてきた人物は どこか中性的な人間だった。
聞けば戸籍上は女であるとのこと。
今医師にかかっていて 性同一性障害だと主張しているらしい。
だが 医師が診断書を書いてくれなくて 苦しんでいる。との話。
同性愛。
世間的には許されない間柄だが、彼女の恋人が 性同一性障害と診断されれば 手術を受けて 戸籍上男になれるんだ。と2人して 目を輝かせる。
今まで 親にも 兄弟にも 友人にも 秘密裏にしていたことが 晴れて結婚し 名実共に夫婦として 皆から祝福されると 涙ながらに 言う。
そんな2人を見て 弟達に それらしく アドバイスしてやろうと 冴子は決心した。
誰からも素晴らしい解決策だと 称賛されるに違いない。
あの素直のカタマリのような 真弓のパートナーに至っては冴子を崇めるような様子だし。私が説得すれば 一も二もなく 承諾するに違いない。
うちのパパに真弓がホモだと言ったときには パパは本人の自由だと 言い放った。でも 冴子は赦せなかった。子供の教育には良くない筈だ。良い訳がない。絶対良くない。
この友人だって 性転換手術さえすれば 晴れて男と女として 結婚し 子供だって望めば 養子とか 卵子を提供してとか 幸せいっぱいに語っているではないか。
ついては 父か弟を医師として紹介してほしいと 言っている。
こんな鼻高々なことはない。
冴子の父も弟も立派な医師だ。
冴子の周りはエリートばかりなのだ。
二つ返事で友人に承諾した。
そして 弟に 性転換手術の話をしたら………
なんで あんな言われ方をしたのか。分からない。真弓だって 籍を入れられるのだから こんな嬉しいことはないであろうに。何故 てめぇ 呼ばわりされるのか。あんな激昂するようなことであろうか?
後日パパに言いつけた。真弓に詰られたこと。真弓にてめぇ呼ばわりされたこと。
パパの反応は冷たかった。
お前が悪い。のひとこと。
何故?私は真弓の為に してあげたのに。
しばらく真弓のことは 何も口出しするなとも 厳命された。
仕方ない。パパがそう言うなら 従うしかない。
パパが 実家から帰ってからは 平和な日々が続いた。
友人の話を母に言ったら 畑違いだから父には紹介出来ないと言われた。真弓も確か整形だか内科だかで、畑違いだから仕方ない。友人には 紹介出来ないと返答した。かなり がっかりしていたようだが こっちは パパからは 口出しするなと言われていたし 他の医師も紹介出来なかった。
真弓も私にひどい言い方をしたから 結婚出来ないことについて悔しがれば良い。
私の意見に従わないことで 後で
うんと 後悔すれば良いと思っていた。
が
あれから しばらくして
真弓が 行方不明だと言う。
真弓の連れも 行方不明とか。
実家に行くと 父母共にあまり 憔悴もしていなかった。
やっぱり 頼りになるのは 長女である 冴子。この私なのだ。
私は母に
どうせ 跡取りとして失格者なんだから 気にするなと アドバイスした。
私まで心配することを煽ったら 両親だって気落ちしてしまう。せめて 私がしっかりして 気丈な処をアピールしないと。
そうそう
失踪者は7年経てば死亡届けが出せるから とも アドバイスをしておいた。
だって行方不明が何年も続けば 父母のどちらか亡くなったら 相続の手続きだって困るというものだ。
早速3階の荷物を始末して 空き部屋にするように言ったが 今は あのオカマ医者が半分借りていて 家賃を少し払っていると言う。それならなおのこと 真弓の荷物を全部売り払えば幾らかの金になるし 晴れてオカマ医者に高い家賃をもらえるのに。
水光熱費は 最初から別メーターになっていて その分は 真弓からオカマ医者に引き継がれているという。なんだ。じゃあすぐにでも 人に貸せたのに。
まったく この家は 私のアドバイスを 聞いてない。求めても来ない。どういうつもりなんだか。
父もとうに、60を過ぎたし そろそろ遺言を書いた方が良いのではないかと 最近とみに思う。ネットで遺言について 調べたら 行政書士が 必要だとのこと。
私が見繕って 父に進言しようか 今は ネットで探している。
ま あの 千春っていう人間は別にどうとも思わないが 真弓がいまだに 行方不明ッテのは 気になる。
相続のこともあるし 死んだのなら 死んだ 生きているなら いい加減に どうするか 父母も 覚悟を決めて欲しい。
私 冴子は
毎日 子育てに 忙しい毎日だ。
それでも ちゃんと 横浜の父母については とても心配している。
横浜の家を始末して 私の近くに引っ越せば 様々面倒をみてやってもいいとは 思っている。
父母にとっても 孫の面倒をみれるから 老けないのでは ないかと思っている。
そう 父母共にこちらに呼んでやっても良い。又は 横浜の家を始末した金で 我が家をリフォームすれば良いではないか?二世帯住宅にして。
父母は孫の面倒を嬉々としてみられる。母は体を動かして健康になれる。父も 車で孫の塾の送り迎えなどさせて 体が健康になる。家の掃除を全部2人でして 庭の植木も父がやれば ボケたりしないし 体も丈夫でいられる。
横浜の家を始末しなければ リフォーム代は 出てこない。3階だけ残すことが出来れば 家賃が入るけど 分割して貸すとか。1階のクリニックをあのオカマ医者に建物を貸すとか。すでに患者を抱えているから 相場以上の価値は有るはず。
相場の不動産プラスアルファ。
しかし 真弓は どこで 何をしているのだろう?
行方が分からないのだから 当然クリニックの診察を辞めたと言うが 医者をやめて 何の特技もないくせに。モグリの医者でもしているのかしら。
千春って あの男なんか どうするのだ?
父も母も 真弓が私と縁を切りたいらしい とは言っていた。
生意気な。小さいときから 散々面倒をみてやって 様々教えてやって やっと一人前にしてやったのに。
所詮 真弓は 優秀な人間では無いってこと。
私だって 心配はしている。
一応 弟なんだから。
万が一 犯罪者にでもなっていたら 困るもの。
落ちぶれて お金でも せびられたら それはそれで心配。
こんなに心配してやってるのに 本当に真弓って 馬鹿なんだから。
こんなに 人に心配させて どこまで 人に迷惑をかければ 気が済むのだろう?
私の言うことを聞かないから 人生の落伍者になるのだと 言ってやりたい。
あの S 市のマンションはどうなっているのだろう?賃貸ではなく 分譲だった筈だ。行方不明ならあと7年したら 所有権は横浜の両親のモノになるのだろうか?何年もすると価値が下がるのではないだろうか?それとも処分して行方不明になったのだろうか?
売却したら そこそこのお金を手にしてるかもしれない。なら 横浜の両親から お金をせびったり しないかも。
こんなことまで 長女の私が 心配してやらなければ ならない。
本当に いつまでも 私の手を煩わせてくれるわ。
私だって本当に忙しいんだから。
子供の学校のPTA の役員を押し付けられて 毎日学校に通う日々だ。
広報か会長をと 乞われて 広報に精を出している。
毎日 忙しくて忙しくて。
本当に 大変な日々 なの。
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