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はい お待たせ致しました。
病院に着いて、依頼主らしき人と待合室で合流して そう声を掛けた。
その人は年令は70代くらいの お婆ちゃん。ご主人が老健檀に入所していて 風邪をひいて熱が高くて 肺炎の心配が有るから 病院への診察を指示されたとのこと。
原則 病院への診察は 家族の仕事。緊急性なら 救急車で施設から病院に搬送されるが ただの診察なら原則施設はノータッチ。だが 四角四面にとらわれず 施設から病院までは 診察予約して 移送まではしてくれたらしい。
「あら 檀の人?」
正確には檀の福祉法人の所属だけど 施設の介護職員でもなくて。まぁ 良いか。頷いておく。
「あのね 今ねレントゲンの写真を見せてもらったんどけど よく分からないのよね。
うちの主人ももう80過ぎたでしょ?なんだかね 血管に柔軟性が無くてね、肺もね 前に肺炎になったりしてるし。肺がね 全部使えないとか よく分からないのよね。だからね 人工呼吸に切り替えても 血管がもたないとか。心臓マッサージしても血管が固いとか。なんかね 肺炎だったら 抗生物質を投与するとか 肺がね白いとか 黒いとかって。あなた 分かる?」
俺だって医者じゃねーからわからねぇ。でも ニュアンス的には いざっていうとき 延命措置は難しいってことを 言われたんじゃないかな。
でも この 心細い感じの婆ちゃんに そんなことは 言えねーし。
「あのー ご家族の方は 他には 居ないんですか?」
「あら あなたも お医者さんと 同じことを言うのね!もう ダメなの?死んじゃうの?うちのおじいちゃんは?ねぇ 死んじゃうの?」
いきなり よく分からないことを俺に聞かれても 困っちまう。俺 じいさんを乗せる為の車の運転手なんだけどな。
「あの 落ち着いて下さい。とりあえず 俺が呼ばれたのは 診察を終えて 檀に帰るんですよね?ご主人を乗せて」
「帰って良いの?死なないのよね?」
「あの ちょっと待ってくださいね。看護師さんに聞いてきます。入院とかじゃ無いんですよね?」
「さぁ?タクシーじゃ 乗せられないからって檀の人が タクシーを呼んでくれるって言ってたの。そうそう この病院にはね 檀の人が 付き添って来てくれたの。どこに行ったの?あなたご存知?あら あなた檀の人?私を乗せて来てくれた人じゃないわよね?あら?あなた?檀の人は?あら?うちのおじいちゃんはどこかしら?」
このお婆ちゃん 大丈夫かよ?気が動転してるのか?
そのとき 看護師が
「寝台タクシーの方ですか?
良かった。先程檀の職員さんが 帰りまして。奥さんは待合室で。娘さんが いらしたんですが。あー居た居た。」
すると向こうから中年の女性が表れて
「あー寝台タクシーの方ですか?お世話になります。」
と頭を下げてきた。
お婆ちゃんは ようやく安心したのか そーいうことなんですよ って 又椅子に腰かけてしまった。
「すいません。
あの この奥の 廊下の突き当たりの処に 居ますんで。
あのタクシーはどこに?」
それから 寝台車を玄関につけて ストレッチヤーを降ろして 病院の廊下を過ぎて待機していた看護師と協力して 毛布でくるみ ストレッチャーに移して 俺の寝台タクシーに乗せる。
ベルトで固定して 真ん中のドアを開けて 付き添いの家族を乗せる。
そして 老健 檀に。
檀で 職員に声をかけると すぐ2~3人降りてきて 寝台タクシーからストレッチャーで降ろして 居室に案内されて 職員さんと協力してベットに降ろした。
これで俺の仕事は終わりだ。
檀の ロビーで 計算書を見せて 料金を貰う。
ありがとうございました。
と お客様からも 声を かけてもらい 俺も 頭を下げる。
お客様が見えなくなって ほうっと 息を吐く。
顔馴染みの 檀の職員さんが 千春さんっ。お茶飲んでいかない?
と声をかけてくれた。
ここの職員さんは オーナーの真弓さんと俺が親戚だと 思っている。
その縁で 寝台タクシーをしていると思っている。
ま それで いいんだけど。
そのあとは 予約も無かったから お言葉に甘えて 俺は 事務室の奥で 渋いお茶を飲んで しばし肩の力を抜いたのだった。
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