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持田のモッチャンは 顔をしかめていた。
今日は仕事で幾つかの取引先に行き 直帰の予定なのに 上手く移動できないからだ。
いつもなら 地下鉄とタクシーを使って 午前中には予定の半分をこなしている筈だった。
午前中に 都内を終わらせて 昼を挟んで 午後には横浜へ移動している予定だった。
直帰でも 午後一番には 一度会社に顔を出して 最新の資料を取りに行きたかった。
だけど 都内での予定がまわらない。
タクシーがつかまらない。
中東の国から国王だか誰かが来日していて都内からタクシーが消えたかのように 空車がいない。タクシー乗り場にもタクシーが居ない。
地下鉄の駅まで歩くには少し距離がある。しかも乗り換えをしなければならない。普段は時短の為 いつもタクシーで移動している。
鞄の中には資料を抱え 取引先への菓子折りも有る。
舌打ちしながら どうにか 地下鉄とJRを乗り継ぎ 横浜まで来た。昼をどこかで食べようか 先に会社に戻ろうか 考えていたら ちょうど目の前に電車が来たので 顧客の処へ先に行くことにした。
郊外の駅に降り立ち 連絡をいれようとしたら 駅前の中華料理屋から出てきた人間に 目を細めた。
ヨシヤスだった。会社のジャンパーを着て書類ケースらしき鞄を持ち誰かと話しながら店から出てきた。
相手は 明らかに 日本人ではない。
仕事関係だろうが アイツ日本語で話しているのか?普通に話している。アイツが日本語以外話せる訳がないから たぶん向こうは日本語が堪能なんだろう。
そして 近くの駅前広場の 植木を囲むようになっているベンチに並んで腰をかけて話しをしている。
少し離れて木の陰に2人の背中を見ながら近付いて持田も腰をかけ 何とはなしに話に聞き耳をたてた。
「へぇー。これから日本に住むんですか?」
「はい。私は通訳として来日しました。でも私は通訳ですが 来日の為日本の事情や様々な手配をスムースに進める為のアンテナみたいなことをするのです。私の雇い主が 日本にいつ来るかわかりませんが、何か食べる 医者に行く 何かを買うとなった時に 地元コーディネーターが必要ですからね。その為の先乗りの駐在員みたいな感じですかね。」
「へぇー。そんな何時になるか分からないのに そういう人を日本に住まわせるんですねー。スゲー金持ちなんだなぁ。それであなたは都内ではなくて横浜がいいんですか?」
「都内にも別の人間が住みます。横浜にも 関西 北海道にも。
今来日している中東の あの国王。お付きの方は千人。
私のボスは そんなに沢山連れて来日しません。それほど金持ちではありません。だから 私も日本の横浜に住みますが 新しい家は購入出来ません。古い家をリフォームして住もうとしています。日本には リフォーム会社が有るの 知っています。私の友人の日本人が ヨシヤス。あなたの会社が良いと教えてくれました。ヨシヤスが良くしてくれた と聞きました。だから 私 ヨシヤスに直接電話しました。よろしくお願いしたいです」
「はぁ わかりました。とにかく 日本語上手ですね。オレ日本語以外しゃべれないんス。よろしくお願いします。俺を紹介したのって誰なんスカ?」
「それは勘弁してください。私の大切な友人です。とてもね。とても信用出来る人間です。」
「紹介料なんか出ますよ。その人に。その人の名前が分かれば お宅の工事費に割り当てて 割り引きも出来ますよ。」
「いえ。それは良いです。ヨシヤスさん あなたはご自分の家をリフォームしました?あなたの家はどんな壁紙?床は?どんな造りなんですか?是非見てみたいのですが そういうプライベートは公開しない主義ですか?私は 友人からあなたのことを聞いて あなたに興味を持ちました。あなたは 独身で一人住まいと聞きました。
でも 私は ヨシヤス あなたに 仕事を頼むからといって 無理を言うつもりはありません。
仕事は仕事。プライベートはプライベート。何か有っても あなたには仕事を依頼することは 変わりありません。あなたの会社にも 何も言ったりするつもりはありません。
私の言うことは 理解してくださいますよね。」
「はぁ。俺 あなたの知り合いは 誰だかわかんねーんですけど。俺ん家見たいんですか?たいした家じゃないっすよ。普通のマンション。分譲だから 好きな色の壁紙と 床は全部フローリングにね 自分でやっちゃいましたけど。」
「ヨシヤス あなた自分で壁紙貼ること出来るんですか?床板貼るの?凄いですね。今夜 あなたの家に行きたい。私を招待してくれませんか?あなたとゆっくりお酒でも飲みたい。お酒飲めますか?あなたの好きな酒持って あなたを訪ねます。素晴らしい時間を過ごしたい。私の言うこと分かりますか?」
「さぁ?コイツバカですから あなたの言ってること理解してないと思いますよ」
俺はヨシヤスと客の話に割り込んだ。
「あれっ?モッチャン。どーしたの?スゲーな。こんなところて会えるなんて。スゲーな」
「あなたは誰ですか?」外人の男が言った。
「俺はヨシヤスの保護者みたいな者です。
あなたが言わんとしてること コイツ全然わかっていないと思います。どのような意図で コイツの家に行きたいのか 聞く前に コイツの所有権は俺に有りますから。保護者で しかも コイツの所有者です。残念ながら 興味を持たれても 既に遅いですから。言ってること解りますよね。」
「Understand .」
「仕事は仕事で コイツを使ってやってください。しかし コイツの家には 俺がもれなく 付いてますから。」
「一緒に住んで?」
「似たようなもんです。いずれ いや 近々そのようになります。今も ほぼ 同じようなもんです。」
「わかりました。プライベートには もう 関わりません。約束します。彼はフリーだと聞いていたので。sorry.
じゃっ 失礼しました。」
そう言って彼は 歩き去った。
ポカーンとした ヨシヤスが
「モッチャン 何だって?あの外人何て 言ったの?俺良くわかんねー。」
俺だってわかんないよ。ヨシヤスが誰から口説かれようが 関係無いだろうに。なんで口出ししちゃったんだろう?
このバカが 口説かれてるのにも気が付かないからだ。
このバカが あの外人にヘラヘラと なんでも ハイハイと言ってるからだ。
貞操の危機にも 気が付かないからだ。
そういう趣味趣向の男に 好意を持たれるような 雰囲気を このバカが 持ち始めたからだ。
それにさえ 気が付かない。
この バカ野郎!
ヨシヤス。お前 俺に どうしろと いうんだよ。ヨシヤス。
俺 そういう つもりはなかったんだ。
俺 お前が 他の男に 口説かれてるのを見ただけで こんな こんな。
ヨシヤス。
お前 タチが悪い。
なんで そんなに バカなんだよ。
何なの?お前。
俺は げっそりして 能天気なヨシヤスの顔を ただ 見つめていた。
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