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土曜日の夜 真弓さんと 風呂も夕飯も済ませてウィスキーのお湯割を 寝酒代わりに舐めていた。
スマホが鳴った。
見覚えのない番号だったが 一応ONに。
『もしもし?千春?
俺だよ 俺。 ヨシヤス。』
「なんだよ 誰かと思った。ヨシヤスかよ。なんだよ?番号変えたのかよ?」
『ちげーよ。これさ 違う人のスマホ。千春よ 俺さ お前をさ びっくりさせてやろうと思ってさ。驚くなよ。これから 或る人に替わるからよ。お前の大切な人。お前 罪作りな奴だなぁ。お前 キスもした人を 放っておくなんてな。」
ええーっ?
今 ヨシヤスは何て言ったー?
周りが騒がしいな。酒でも飲んでるのか?
『千春?私。覚えてる?』
女の声。誰だ?
目の前の真弓さんがグラスを置いて 眉をしかめている。俺を睨まないで下さいよ。
ヨシヤスと聞いて スピーカーにって 口が動いている。
いや まずいっしょ。
しかも 今 どこの誰だか知らないけど 女だし。しかも ヨシヤスはキスなんて言ってるし。
何? 何? これ。俺 やましいこと してないけど 何なの?これ。
絶対 まずい状況だよね。
スマホから 又 女の声。
『千春?私のこと 忘れたの?ひどい人。
千春の家で誰も居ないとき キスしたのに。一緒に 夕飯作って 一緒に食べて お風呂は 交互に別々に入ったけどさ。そのあと 布団敷いて』
側で バカなヨシヤスがゲタゲタ笑っている。酔ってるな。
「えっ!!
俺のうち?っすか?俺が?
えっ! えっ!
あの ちょっと あなた 誰ですか?
あの どこの どちらさま なんすか?
俺 千春なんすけど。俺のこと ごぞんじで らっしゃって らっしゃる んで ございますですか?
俺 あなたさまに 失礼なこと しちゃったんで ございましょうか?
あの あの 俺 千春なんで 間違いは ございませんですが どちらさまですか?俺が布団敷いたんです?あなたさまが 布団敷いたんですか?
俺 何したんでしょ?俺 俺 何か とんでもないこと あなたさまに した の で した か?」
向こうでは ヨシヤスが 更にバカ笑いしている。
「あの ヨシヤスとお知り合いでございますでしょうか?ヨシヤスが俺に 電話を仕掛けたので ございましょうか?
俺 俺。」
すると又女が喋り始めた。
「千春?久しぶりだから 覚えてないのかな?私 あなたのこと 忘れたことなかったのよ。ひどい人。千春。覚えてないの?千春。」
「千春。千春って。
俺を名前を呼び捨てになさっちゃって くれちゃってますが 俺を呼び捨てにしてるのは 俺のその 戸籍の義理の父親。そして俺の友達とですね 昔の女房とですね。あとは 居ないっすよ。あんた 誰ですか?ヨシヤスとグルになって俺をからかってますか?
俺 びっくりしちゃいました。変な冗談に付き合えませんよ。ヨシヤスに替わって下さいよ。」
布団敷いた なんて聞いた辺りから 真弓さんが スピーカーに と しつこく言っている。
スゲー眉が ぎゅっと してて 怖い。
俺 俺。絶体絶命っぽい?
だなぁ。
ヨシヤスが電話にでた。
『千春?俺 俺。お前 忘れたの?俺は覚えていたぜ。モッチャンも覚えてた。なぁ モッチャン。』
「モッチャンも居るのかよ。モッチャンに替わってくれ」
すると真弓さんが 俺の手からスマホを取り上げ スピーカーにしてテーブルに置いた。するとスピーカーからモッチャンの声が聞こえてきた。
『よう。千春。スピーカーにでもしたか?
ふふふん。
お前さ 罪作りな奴だなぁ。
キスまでしておいて 忘れたか?
フフフ。
聞いてるのか?オーイ。
千春はキスしたんだぞ。この娘と。
キス。
この娘は 千春。
お前が 初恋の男 だ と さ。
聞いてるか?千春。
お前さ 千春。
一緒にさ お前の家でさ 飯まで炊いたらしいじゃん?
一緒にさ 夕飯 何回も 食べたらしい じゃん?
遅い時間に飯 食うとさ
お前 一緒にさ 布団をさ 敷いて 一緒にさ 寝た らしい じゃん?
それなのに 千春さ お前 覚えて ねーの?冷たいんじゃ ねーの?』
向こうでは ヨシヤスがひーひー呼吸困難かと思える笑いが聞こえる。
近くで ぎりっ と 真弓さんの歯噛みが聞こえた。
真弓さんが 俺を睨む。
俺は 否定の意味で 首を横に ぶんぶんと振る。
能天気なヨシヤスが又 電話に
『千春ー。お前 いつも 怒られて ばっかりの 旦那 だったな?』
えっ!
昔の女房か?
「えっ! ヨシヤス!
アイツと飲んでるのか?」
俺は一番目の女房の名前を言うと
『違げーよ。
ブッブッー。ハズレ。』
「じゃあ アイツ?」
2番目の女房の名前を言う。
『ブッブッー。違げーよ。
千春さ お前 キスした 女の名前も忘れたのかよ。キスした相手は 数えきれない程居て わからねーってか?ガハハハ。千春も罪作りだなぁ。
あ
ところでよ 忘れるとこだった。話変わるけどよ この前 萩ちゃんから連絡有ってよ 千春の住所教えてくれってさ。俺から萩ちゃんにメールしても良いし。千春から萩ちゃんにメールしても良いぜ。」
「ヨシヤス。
お前 タチの悪い 冗談ばかり言うと 俺 本当に 許さねぇからな。
俺 お前からの電話 着信拒否するぞ。
俺 怒ったら お前 殴るかんな。」
そこまで 話したところで 真弓さんが スマホを 取り上げOFFにして ポーンとソファーの方に放り投げた。
怒りの 真弓さん。
身に覚えのない 罪を 目の前に 出されたとき 人間は どう 対処したら いいんだろう?
冤罪って 言うんだ。
こういうの。
痴漢の濡れ衣を着せられた人は どういう 態度を取るんだろう?
殺人現場で被害者を助け起こそうとして 血だらけの凶器を拾って手に取った 途端 警察に踏み込まれたら どういう顔をすればいいんだろう?
ドッキリカメラかと 思って いたら ドッキリカメラでも何でもない 窮地に 人間は どういう態度を とったら いいんだろう?
玉手箱を開けている最中に 駄目だ って 浦島太郎に 言っても 煙が出始めているのに どうしたら煙を止められるんだろう?
数人乗ってる 密室 エレベーターの中で誰かがものすごく くさい おなら をしたとき 俺じゃ 無いって 一番に言えるか?黙ってりゃあ 自分じゃないって顔を必死にする?じゃあ おならしてませんって どんな顔だよ。
でも
何となく した気分にさせられちまう ってことも 有るだろう?
若い綺麗な女ばっかり乗ってて 男が俺一人だったら お前ら女の中に くさいおならをした犯人が居るぞって 言えないよな。しかも おならをした犯人含めて 女が全員俺を睨み付けたら 俺 きっと すいません って 顔をしちゃうだろうな。
ヨシヤスの話は 嘘っぱちだけど。
女が 俺に そういう 言い方をするって 多少なりとも 俺は 以前 そういうことを
したのかもしれない。
したように 女に思わせたのかもしれない。
そう思ったら 必死に違うって 真弓さんに 否定するのも 違うのかな?
違うくないのかな?
事実は無くても ヨシヤスやモッチャンが 俺に そういう イタズラをするだけの 弱味っつうか 事実に近いことが あったのかもしれない。
俺。違いますって 断言出来ないような気持ちに なってきた。
俺だって 忘れてること あるかもしれねーし。
昔 知らねー間に 俺酔っぱらって キスしたのかなぁ。布団に入ったって。言ってたよなぁ。
俺のこと 千春って呼んでたよな。誰だ?
真弓さんは 腕組して 立ち上がってスマホを再び手にして 画面を睨んでいる。
俺は ただ 座ったまま 真弓さんを見上げるしかない。
でも 俺 今は真弓さんだけ なんすよ。
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