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番外編 あのときの千春 10
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翌週 俺は それから 北に行ったり 日本海側に行って 南下したり太平洋側から北上したりした。合間に 横浜に帰ったりもしていた。でも夜中だったり 日中に
帰るから なんか 横浜に帰ってますって 言いにくくて。
地方に行くと メールした。
折り返し真弓さんから 電話がある。
お互いの好きな食べ物や 好きな歌など 話をして 真弓さんのことを 知っていくことが、なんだか とても嬉しくて仕方ない。
話をしていると 真弓さんの顔が浮かんでくる。距離が凄く離れていることが もどかしい。
もしこれが 俺の家なら。
真弓さんがクリニックに居たら。
あまりに近くて こんな もどかしい思いをしなくて良いのかな?
でも 真弓さんは地方に居る俺を慰めるような 同情の気持ちかもしれない。
そしたら
今家なんすよ。 って言ったら
なぁんだ じゃあ 一人で地方じゃないんだ。電話切りますね。
とか言われたら へこむよ。
だから 時々横浜に帰って来ても その時は なんか怖くて メールもしなかった。
地方に行けば なんか 横浜に帰りたくて 落ち着かなくて 夜は スゲーさびしくて。
今まで さびしいなんて思ったことなかったんだけどなぁ。
でもいつまでも逃げてる訳にはいかねぇ。
或夜。
意を決して 真弓さんに 恋愛について聞いてみたんだ。
「真弓さん。」
「何でしょう?時間が来ましたか?」
「いえ 時間は大丈夫っす。
俺はね 高校の頃ね、友達が連れてきた女がね 最初の女房でね。その頃婆ちゃんが死んじゃってて。ずるずると居ついちゃって。雑魚寝していたと思ってたら 俺と女だけでね。俺気がついたら 女房に抱きつかれてて。初めてだったんすけど。一緒に暮らし始めて 初めて名前を知ったような感じで。それから 何年か一緒にいて 籍だけ入れたんだけど 親戚とか何かゴチャゴチャして。結局女は出ていって。
その次のは 酔っぱらって いつの間にか 居ついちゃって。籍入れたんだけど。結局 出ていっちまいました。
俺 遊びっていうのも知らなくて。女房がね 女って病気持ちばっかり。って言われてたから。
俺 女房が初恋なのかなぁ。
最近 そんな風に思うんですよね。」
「えっ?いわゆる 女遊びはしなかったんですか?」
「やぁ 恥ずかしいな。病気にビビッて 女遊び出来ない根性無しなんすよ。それに知らない同士で そんなこと 出来るもんすか?
女房は出ていって ずいぶん経つから 顔も忘れちまったけど。でも一緒に暮らしてたんだから 嫌いじゃなかったと思うけど。」
「奥さんのこと 思い出したりしないんですか?」
「う~ん しないっすね。
写真も無いっすから。
顔もうろ覚えかな?
写真有れば 思い出すかもしれないっす。」
「奥さんと別れてから家事とか大変だったでしょ?」
「いや 両方とも 掃除も飯の支度も 俺がメインでしていたかな?俺が居ないときは やっていただろうけど。
それで あのぅ その なんですね。
まっ 真弓さんは 今まで 誰かと 付き合ったり しちゃったりなんか したりしたんですかね。いや 別に 話したくないなら 話さなくても 良いんですよ。はい。まぁ ついでに よその人は どうなのかな なんて ちょっとだけ 思ったり 思わなかったり。」
俺は このとき 少しうぬぼれていたかも しれない。真弓さんが 少しでも俺に 興味っつうか ある程度の 好意を持ってくれている って どこか 思っていた。
だってさ 俺のこと 色々 聞いてくれて 俺の話を面白いって 言ってくれて。患者と医者 としての きっかけは 関係ないって 言ってくれたし。
野球を観に行こう。映画を観に行こう。アメフトを解説する。個人として 酒を一緒に飲もう。近付いて隣人としてじゃなく付き合おうって。
好意って言っても 恋愛には関係なくても くっついて いても良いんかな って。肩組んで酒飲んでクダ巻いても 良いような 間柄だって。
俺一人の胸に 好きな気持ちを押し込めて 酒飲み仲間になれただけでも 良いや って。思っていた。
多分この真弓さんって 人は
恵まれた環境で 人から嫌われたりしたことも無いんだろうなって。
エリートみたいな 鼻につくような人じゃないけど 俺みたいな 新しい人種が 珍しくて 熱心に観察するように 俺をかまって くれてるんだろうって。
俺みたいな馬鹿を からかう気持ちで俺に注意を向けて 俺の機嫌を取るみたいに 一段下がって 俺の相手をしてくれてるんだろう って 思っていた。
これは 一過性のハシカ みたいなモンで 俺のことが、飽きたら 潮が引くように俺から離れて行くんだろうな。って 思っていた。
だからこの真弓さんって人には 恋なんて 一番遠い 言葉かもしれねぇ。
まぁ俺も こんなに あれこれ思うことが、初めてだし しかも相手は男だし。
でも 覚悟はある程度 決めたんだ。真弓さんって人を 俺は 好きになってるかもしれない。
だからこそ 俺の想いを知られたらいけないなって。
だって 一回会って話をしただけの俺に こんなに恋人かよ ってくらいの マメさ を発揮するんだから。一緒にどこかに行こうって 誘うんだから。俺をほめるんだから。
真弓さんって 人は
新しいモン好きで。熱しやすく冷めやすい人なんだ。って。
そうでなきゃ 俺に興味や好意を示す訳ねーもん。
だから ある意味 諦めもつくだろうって。俺と真弓さんって人は 今だけ 期間限定の なんつーか ちょっとだけ親しくなりかけの 友達ちょい越えの関係。
真弓さんは
沢山付き合ったからわからないな って返事か。
そこそこ人並みですよ って返事か。
今も何人か居ますよ。紹介しましょうか って返事か。
合コン行きますか って返事か。
本気になった女は居ないかな。沢山居過ぎて。って返事か。
実はもうすぐ結婚する予定でね って返事か。
決まった婚約者が居るんですよ って返事か。
すると
「……僕はね ちゃんと 付き合っている人は 今まで居たことが ないんです。
初恋は 2年前でしたけどね。
心の底から 好き でした。」
「そうですか……」
話はそこで終わり 気まずいような重い沈黙。
その初恋の人と今も続いているのか。別れたのか フラれたのか いまだに その人のこと 好きなのか
分からないし 聞いたりもしなかった。
案外 一途な人なのかもしれない。
なんか 俺は フラれた気分だ。
よし 諦めもついた。
気晴らしに 諦め モードで楽しい思い出作りをしよう。
せめて 嫌われないように 臭くない男になろう。下の毛剃るぞ。
肩の力が抜けた。楽しく飲もう。友達と飲んでる気分で 真弓さんと過ごそう。
そして 俺は ついに 真弓さんと飲むべく 連絡をいれようと 決心したのだった。
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