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真弓が帰宅すると 部屋の中は真っ暗だった。メールをしても 返事がなかった。千春はどうしたのだろうか?
駐車場には千春の車が有った。
帰宅していることは間違いない。
風呂にもトイレにも居なかったと思う。
ダイニングテーブルには 千春のスマホがあった。チカチカと点滅して メールやら 着信やら 山ほど来ていた。
そのとき 着信があった。なぜかバイブのままで 音が出ない。バイブが止んで又。 止んでは又。画面を見ると登録されていないようで 着信履歴は数十にも及んでいる。
少し躊躇ったが 千春のスマホを手に取る。まずは異常な数のメールを開く。
会社の人間ばかりのようだ。
(山手さん 辞めないで)
(クビなんてひどいですよね)
なんだって?
クビ?
(所長も何も言わなくてひどいですよね)
(山手さん きっとわかってくれますよ)
(山手さんが辞めたら俺も辞めます)
(本社の部長 ひどいよ)
辞める?
わかってくれる?
いったいどうなってる?
着信はメッセージが入っている。
かなりの数のメッセージ。
古い順から聞いてみると。
「もしもしちーちゃん?出て下さい」
「俺ちーちゃん待ってますよ」
「蟹とノドクロおすそわけしますよ」
「ちーちゃん出ないと 親父に電話出来ないっすよ」
「怒ってますか?電話は高田さんに聞きました。」
「ちーちゃん 営業所に電話しましょうか?」
「ちーちゃん怒ってますか?」
「ちーちゃん 親父に電話しようかと迷ってます。ちーちゃん一緒に親父に電話してくださいよ」
「ちーちゃん 俺決心しましたよ。親父の処に帰りますよ」
「ちーちゃん 俺 高田さんにも 会社辞めるって報告しましたよ」
「ちーちゃん ちーちゃんの会社に連絡しますね。俺取りに行きますよ。チーちゃんの処に」
例のクレームの件
かなり 不味い方向に向かっているらしい。
真面目に仕事をしている千春が クビ
冗談だろう?
それより 千春は何処なんだろう?
すると ベッドルームから 眠たそうな千春が 姿を見せた。
「あ 真弓さん おかえりなさい。
俺
会社
クビに なっちゃった。
しばらく 俺を 養って貰えますか?」
と なんとも言えない顔で
眉毛を下げて 千春が
つぶやいた。
「え?何?
千春 どーした?」
「あれ?もう こんな時間なんすか?
俺 会社途中なんすけど 早く 帰ってきて 寝ちゃった。
あ 夕飯支度してないや。すぐ ご飯の支度しますね。
あれ?買い物してこなかった。材料ないな。買い物行かなくちゃ。
どーしよ。真弓さん ごめんなさい。
何も無いから 真弓さん 外で ご飯食べてきて下さい。
俺 俺 会社クビで。懲戒免職だって。
飯 何にも思い浮かばない。
すいません。」
千春は虚ろな目で
僕は黙って千春を抱き締めた。
グリグリと頭を僕の胸に押し付けて。見上げた顔は魂が抜けたように そして 困惑の表情。笑おうとして 笑うのに 失敗したようだ。
「千春?飯なんか良いよ。
ほら ただいまの キスをしようか」
すがり付くように 唇に 吸い付くように千春がキスをしてきた。
背中をさすりながら 宥めるように 頭を撫でた。肩を抱きながら ソファに座らせた。
「千春?クビなんて 今は無効なんだよ。最低1ヶ月前からなんだ。クビなんて……」
そう イマドキ クビという言葉自体 死語だ。
だいたい根本的に 言葉遣いが 間違っている。
懲戒免職は公務員であって 民間会社は懲戒解雇という言葉だ。
刑事事件の犯罪者てもあるまいに。
就業規則に盛大な違反をするとかでも 即馘首になんてならない。馘首は1ヶ月前以上前から言い渡さないといけない。
更に 仮に辞める時も 失業保険の兼ね合いで自己都合か退職勧奨かによって 給付金が違って来る。
とにかく クビなんて 上司は 無闇に 言ってはならないのだ。
「最初から話せるかい?落ち着いて そばに居るから。どーしたの?」
つっかえつつ あちこち話が飛んだりしたが 千春の話を聞くと。
本社の営業部長の 八つ当たりに過ぎないのでは無いだろうか?
「それからね 千春?大丈夫だよ。たとえ 万が一 万が一にでもだ。 会社を辞めたとしてもだ。
僕が 一生養ってあげるよ。僕は 千春を食べるのに困らないくらい 稼いであげるよ。その代わり 僕が毎日 千春を抱けるから 僕は 毎日 楽しくなりそうだよ。
今 足りないくらいだからね。
でもさ そうならないかもしれない。
取敢えず スマホを 見てごらん。
メールも着信も沢山来ているよ。」
とスマホを渡した。
千春は あまりの メールと着信の 多さに 目を剥いて スマホを取り落としそうになっていた。
同僚からのメールには 少し と言うか とても 腹が立つほど 嫉妬したけどね。
男女問わず 好かれる千春。
本当に 天然のタラシだ。
でも そんな 顔して。
可哀想に。
怯えたように。
千春から 自信を 根こそぎ
奪い取った 営業部長とやらに
殺意さえ 覚える。
「千春? お腹が 空いてると
碌なことしか 考えられなくなるから。
まず 腹ごしらえ しようか。
あんまり美味しくないけど
すぐ下の 中華でラーメンでも 食べに行こう。」
財布だけ持って 千春を急き立てて マンションに近い 中華料理屋に向かった。
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