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灰色生活にひとつの肉まんを
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そんな僕に笑顔を浮かべた男は、立ち上がった。
「じゃ、俺バイトだから、じゃあな」
そのまま僕の元を離れた男。
結局、あの男は何がしたかったんだ。
家に帰れ。と説教し、中途半端な説教でいなくなる。
訳がわからない。
でも、僕の手にある、肉まんは少し温かくて安心した。
たれ目の瞳のあの男の顔がちらついた。
僕は紙の袋から丸い形の中身を取り出し、齧る。
「……美味しい…」
今まで、ひとりでいた僕にこんな優しさをくれた人なんていなかったかもな。
不良が一方的にからかってくることはあったが、こんな説教まがいなことを言って、食べ物を渡してくれた人なんていなかった。
偽善的な優しさだけども、妙にその優しさに胸が温かくなった。
――12月12日の冬の日のこと。
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