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悪夢
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まず僕は、『サナダ虫』というあだ名を付けられた。
「兄貴に寄生してたし、ぴったりじゃん!」
そして机に『泥棒』と書かれた。
消しても消しても書かれるので、ついには消すのをやめた。
そして休み時間になると、クラスメイトが僕の机を囲む。
「オマエさぁ、泥棒なんかして楽しい?」
「さっさと財布返せよ、クズ!」
「兄貴がいなくなったら、オマエ何にもできないのな。
何の価値もねーな、サナダ虫は。」
休み時間の10分間、ひたすら罵られる。
それが嫌でトイレに逃げ込んで小便器の前に立つと、後ろから蹴られたりしたので、個室に入る。
個室に入ると、上から水をかけられた。
習字道具や絵の具は踏まれたり、折られたりして、ろくに使えなかった。
そのせいで先生に怒られた。
席替えをして、僕の隣になった女の子が泣きだした。
「サナダ虫の隣なんて、罰ゲームとしか思えない!」
授業中は前を向いているだけで、こっちを見るなキモいと机を蹴られた。
そんなまま季節はいくつか過ぎた。
家族には言えなかった。
優しい家族だから、尚更。
秋になり、音楽会の練習で、既にその時僕は声を出すこと
が恐ろしくなっていて、俯いて立っていた。
みんなに挟まれて立っているだけで精一杯だったから。
音楽会では、優秀なクラスは表彰される。
僕のクラスは表彰されなかった。
クラスで一番モテていた女の子が泣きながら、
「真田くんが歌わないからだよ!皆んなで歌わないと優勝できないのに!真田くんのせいだよ!」
それ以降、更にイジメは激しくなった。
休み時間は教室から連れ出され、お腹や背中を殴られる。
一度、トイレの床を舐めさせられたこともあった。
「コイツ、便所の床舐めたんだぜっ!便所虫だ!
ほら便所虫!便所虫っ!」
教科書はビリビリに破られ、落書きされる。
そして、3年生の終業式。
明日から春休みだ。
ようやくこのクラスともお別れだ。
でもどうせ4月から、また同じようにイジメられるんだろう。
地獄だ。
ビリビリの教科書と、壊された絵の具セット、習字道具を手に悩んでいた。
これを持って帰れば、僕がイジメられてたのがバレてしまう。
かと言って捨てる訳にもいかないし・・・。
いっそ交通事故にでも遭ったらいいのに。
破損理由を聞かれることもないから。
・・いや、自分で事故を起こせばいいんだ。
僕はフラフラと国道近くへと歩いていく。
あぁ、やっと解放される。
嬉しい。
そうか、こんな簡単なことだったんだ。
なるべく見つかりにくいように、山の方へ行く。
よし、次にトラックが来たら飛び出そう。
向こうから大きなトラックが来た。
運転手さん、ごめんなさい。
父さん、母さん、兄ちゃん、今までありがとう。
僕は、皆んなと家族で幸せでした。
道路へ出て、トラックに向かって歩きだす。
今は暗いから、僕の小さい姿は捉えられないだろう。
眼前がライトで真っ白だ。
激しいクラクションの音を聞きながら、意識を手放した。
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