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抗う 友side
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幼い時、数年に一度叔父さんは俺に会いに来てくれた。
独身の叔父さんは医師として紛争地域での医療活動をして
いる。
そのため日本にいること自体が珍しい。
でも日本にいる時は必ず俺を訪ねて来てくれた。
そして沢山話をして、沢山スキンシップをとってくれた。
俺にしてみれば、叔父さんの方が親のようだった。
最後に会ったのは妹たちが産まれる前。
「いい兄貴になれよ」
そう言って頭を撫でられた記憶がある。
そんな大好きな叔父さんだ。
「落ち着いたか、友?」
「はい。すみません。」
「ついに爆発したな、オマエ。」
「爆発・・」
「まぁ、いつかするだろうとは思ってたけどな。
スッキリしただろ?」
「はい・・」
「・・友。お前の両親は白鷺家のために尽くして来た。
それはな、決して悪いことじゃない。でも、長男のお前に過剰な期待や圧力をかけることは間違ってる。そして、犬であろうと簡単に切り捨ててしまうことも。」
「タロー・・妹たちに何て言えばいいだろう・・」
「タローのことは俺が言っといてやる。病気で入院して、もう戻らないと言うしかないだろ。」
「そう、ですね・・」
「友。お前は今、幸せか?」
【もちろんです】
と答えたかったが、言葉が出なかった。
身体は分かっている。
偽りの言葉だと。
「幸せって何なんでしょうか・・」
自分でも驚くほどに弱々しい声が出た。
「友!お前は親に潰されて終わる男じゃない!
お前はこのまま医者になって、親に支配されて生きていくのか?
違うだろ!
抗えっ、友!!
お前には選ぶ権利がある!
自分の人生を、自分の手で選べっ!」
両肩を揺らされ訴えられる。
嫌だ、ずっと親に支配されるなんて嫌だ・・
「・・嫌、だ・・・あの人たちに支配されたく、ない・・僕の人生だ・・。」
ガバッと抱きしめられる。
「よく言った、友。いいか?困った時は必ず俺に連絡しろ。金の面倒も、生活の面倒も、何でもみてやるから。負けるなよ、友。俺がいる。俺は絶対にお前の味方だから。」
「ありがとう・・叔父さん・・」
そして大学受験。
僕は日本一賢い京都の方の国立医学部に合格した。
親も届かなかった学校だ。
そして、入学式の前日、姿を消した。
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