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秋月と三年生でかぐや姫的なパロ
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新年明けましておめでとうございます。
昨年もたくさんの方にお付き合い頂き、お陰様で幸せな一年となりました。本当にありがとうございました。
趣味でお話を書いているのにも関わらず、情けない程に読んでくださる皆様に支えられております。なかなか進んで行かない物語ではありますが、これからもまったりと秋月達の日常を書き進めて行きたいと思っておりますので、本年もお付き合い頂けたら嬉しいです。
さて、この番外編、夏から書き始めました七夕がまだ完結しておらず申し訳ございません。時間に余裕がなく滞っております。
そんな状態にも関わらず、昨年に引き続きお正月という事で変なものを書きたくなり、勢いで書きました。
本編とは全く関係ありません。やりたい放題です。
それでもお付き合い頂ける方のみ、綿菓子のような軽いノリでご覧下さい。
むかしむかしある所に、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。
おじいさんは山で竹を切って、カゴやザルを作って生活をしておりました。
ある日いつものようにおじいさんが竹を取りに山へと向かった時の事。
金色に光る一本の竹を見つけたのです。
「ん?なんだこれは…」
朔夜おじいさんはその竹を切ってみる事にしました。
するとその中から、なんとなんと可愛らしい赤ん坊が出て来たのです。
「おぉ…マジか…そんな気がしない事もなかったが、本当にかぐや姫的な展開になるなんて…どうしよう…連れて帰るか…さすがに置き去りは出来ないしな…」
朔夜おじいさんは激しくひとり言を呟きながらも赤ん坊を家に連れて帰りました。
「ただいま」
「おかえりー」
健太おばあさんが出迎えます。
「はっ…?渡辺…その赤ちゃんどうした…まさか俺という妻がいながらどこぞの馬の骨と…」
「馬鹿言うな!俺が愛してるのはお前だけだ!」
「……珍しくノッてきたな…逆に対応に困る…」
「たまにはこういうのも悪くないだろ?」
朔夜おじいさんはドヤ顔です。
「なんか竹が金色に光っててその中から出てきた。から連れてきた」
「……マジかよ…今年はかぐや姫的な展開なのか…どうすんの…?秋月が育つ予感しかしねぇんだけど…」
「とりあえず役所に行って養子の手続きしてこようと思う」
「さすが元部長。責任感抜群だな。でも俺達で育てられんのか?」
「大丈夫だ。原作通りに進めば三ヶ月で美女に育つはずだから」
「ほぉ…渡辺は原作通りに進むとでも…?」
「さすがに育つまでは平気だろう…問題はそのあとだな…」
「……やっぱ竹に戻して来いよ…」
こうしておじいさんとおばあさんは、この赤ん坊に”かぐや姫”と名前をつけて、大切に育てる事に決めました。
それからというもの、不思議な事に竹を切りに行く度におじいさんは竹の中からお金や金銀財宝を見つけ、あっという間にお金持ちになりました。
かぐや姫は無事にすくすくと美しい娘に育ちました。
その美しさはいつしか有名になり、あちらこちらから男達が求婚に訪れました。
でもかぐや姫は興味を示しません。
「瀬川…お前恋人くらい作れば?」
おばあさんは年頃のかぐや姫を心配しています。
「んー…今のとこ興味ないなぁ…」
かぐや姫の祐はいつも物思いにふけてばかりいます。
「まさか瀬川に育つとは…」
「今年もぶっ飛んでんな…」
心配になったおじいさんは男達を集めました。
それから唐突に
「不思議な宝物を持って来た者とかぐや姫を結婚させる!」
と宣言しました。
集まった男達はどよめきましたが、おじいさんは気にせず続けます。
「じゃあ山梨は龍の首の玉な」
「……なんだよそれ…」
「緒方は仏の御石の鉢」
「ホトケ?8?」
「井上は蓬莱の玉の枝」
「ホーライのタマの絵?ネコの絵探せばいいの?」
「……え、ネコ?」
「秋月はネコに食いつくんじゃない…お前は火鼠の皮衣だ」
「ネコの絵なら俺描けますよ」
「やめろ!この番外編のタイトルは秋月の実力じゃないぞ!」
「……なに言ってるんですか」
「いいから!大人しくしててくれ!」
「はぁ…」
「気を取り直して…橘はツバメの産んだ子安貝だ」
「え?ツバメって貝産むの?」
集まったのは個性豊かな男達。
騒がしくてなりません。
「ねぇ渡辺」
「なんだ緒方」
「俺秋月がいるから瀬川と結婚なんかしねぇぞ?つーか知ってる?男同士って実は結婚出来ねぇんだ」
「ちょっと緒方さん…こういう時にリアルなとこ詰めたら駄目です」
「えー?だってさぁ」
「なんで緒方は超絶美少女戦隊レッド担当秋月がいるから瀬川と結婚しねぇの?」
「えっ?!だだだっだだっだって俺には!秋月を守るという使命があるから!」
「ふーん…」
「というか山梨さんと瀬川さんが結婚するべきです。みんなで山梨さんの手伝いをすればよくないですか」
「だからなんでそうなるんだよ!」
ザワザワと騒がしい男達を見て、かぐや姫はため息をつきました。
「俺別に珍しい宝物とかいらないんだけど…」
おじいさんは慌てました。
「そんな事言うな!話が変な方に進んでくじゃないか!どうしてお前達はすぐに脱線させようとするんだ!」
「だっていらないものはいらないし…」
かぐや姫はこの上なくダルそうに男達を見渡しました。
それから突如ニヤリと笑ったのです。
「じゃあ山梨は校長先生の白髪ね」
「……は?」
「緒方は心霊スポットの墓地にある石」
「……えっ?」
「井上は裏山の山頂の木のてっぺんの枝」
「ん?」
「秋月は超有名店の海老の天ぷらの衣」
「……はい?」
「橘は潮干狩りで見つけたシジミ。アサリじゃなくてシジミ」
「え?」
「はい、それぞれ今言ったやつ持って来て」
男達はザワザワと騒ぎ始めました。
「潮干狩りって正月でも出来んのかなぁ」
「いや、ゴールデンウィークの頃じゃね…?」
「山頂の木のてっぺんて何メートルくらいあるんだろ。山っちにはムリだな!」
「うるせぇよ!」
「俺お化けとかマジでムリ…」
「じゃあ緒方さんは俺と変わってください。緒方さんのお父さんに聞けば超有名店とか知ってそうじゃないですか」
「カニよりエビが好き…でも秋月のが好き…」
「……今それ関係ありませんから」
「久しぶりのツンサイコー…」
男達は更に騒がしくなりました。
「まぁこれくらい持ってきてもらわないとね…」
かぐや姫は不敵に笑いました。
「原作では実在した歴史的人物である大納言やら皇子やら大臣やらが宝物を探しに行くんだよ?そんな大役仰せつかったみんなになら出来るでしょ?」
かぐや姫は楽しそうです。
なんだかんだと騒ぎながらも男達はそれぞれの探し物を探しに出掛けました。
そんな様子を見届けてからおじいさんは重くため息をつきました。
「瀬川…どうしてあんな事を言うんだ…あんな無理難題達成出来る訳がないだろう…」
「俺の方がよっぽど現実的じゃない?龍の首の玉ってなに?平成の世に龍がいるとでも?」
「仕方ないじゃないか!これが原作通りなんだ!なのにみんな揃って俺の話を聞こうとしない!ひどいや!」
「……渡辺…キャラ違うけど…」
「今回は瀬川みたいに以外な一面を押し出して見ようかと思ってな」
「……本当にやめて…」
かぐや姫は再びため息をつくと、ゆっくりと空を見上げました。
茜が差し始めた空は夕焼けが綺麗です。
その空にはもうすぐ満月を迎える白い月。
あと数時間もしないうちにこの月は鈍色に輝き出すのでしょう。
かぐや姫はもう一度ため息をついてから、そんな月が映った瞳をゆっくりと伏せました。
「そんなもの集めたって意味ないのに…」
かぐや姫の小さな呟きを聞いていたのは風だけでした。
それから何日か経ちました。
「瀬川ー!持ってきたぞー!」
この声は井上です。
こたつでグダグダとしていたおじいさんとおばあさんとかぐや姫は慌てて戸を開きました。
そこには顔や手足を傷だらけにした井上が笑顔で立っていました。
「これが裏山の山頂のてっぺんの木の枝だ!」
井上の手には確かに木の枝が握られています。
「……本当に取ってきたの…?」
「うん!取ってきた!」
曇りのない井上の笑顔にかぐや姫は俯きました。
「……そんなに傷だらけになって馬鹿みたい…」
「ただいまー!」
次に戻って来たのは橘でした。
「あのな!やっぱこの時期潮干狩りは出来ないんだって!だからこれ!キレーな貝見つけてきた!」
橘の手のひらには白く淡く輝く美しい貝殻が乗っています。
「……そういうのは女の人にあげなよね…」
「ただ今戻りました」
次に戻って来たのは秋月です。
「色々と調べた結果最も有名と噂の天ぷら屋さんに行ってきました。衣だけという訳には行かないので、海老の天ぷらそのものですが」
「……もう冷たくなってるじゃん…」
「戻ったぞー」
山梨も戻って来ました。
「校長先生に頼むのはさすがに気まずいから、さり気なく肩についてた抜け毛持って来た」
「……なにやってんの…」
「あれっ?みんなもう帰ってたのか!」
最後に戻って来たのは緒方です。
「ほい!心霊スポット行ってきたぞ!夜は怖いから昼にだけど!でも間違いなく墓地の石だ!」
「……呪われるよ…」
次々と戻って来た男達。
ちゃんと達成した者もそうではない者もいましたが、かぐや姫は驚きました。
「マジで行ってきたのか…」
おばあさんは開いた口が塞がりません。
「よし!瀬川!この中から一人選ぶんだ!みんなお前を思って旅に出てくれた!どいつを選んでも間違いはないだろう!」
おじいさんは感動しすぎて半泣きです。
その時でした。
突如空から強い光が放たれたのです。
あまりの眩しさに誰もが目を閉じました。
「なんだこれ!まるで部活で目標を達成した時のようにまばゆい!」
「帰宅部員がなに言ってんだよ!」
「姫、お迎えにあがりました。さぁ月に帰りましょう」
誰もが目を閉じる中、それはそれは美しい声が響き渡りました。
「これ坂下の声じゃね?!」
「こういうの引き受けるとか意外!」
「あいつ何気にこういうの大好きなんだぞ!」
目を閉じつつも大騒ぎです。
「……みんな…ごめんね…」
かぐや姫はぽつりと呟きました。
「俺はこの世界の人間じゃないんだ…」
「なに言ってんだ?!そこまでキャラ変更しなくていいぞ!」
「そうだそうだ!」
男達は静まろうとはしません。
「渡辺…田沼…ここまで育ててくれてありがとう…この恩は生涯忘れないよ…」
「なに言ってるんだ瀬川!手が掛からないようで性格的にすっごい手が掛かったけど、お前をどこかにやる訳がないだろうが!」
「……渡辺…」
「そうだぞ!むしろお前のおかげで金銀財宝ザックザックだった!」
「……田沼…」
かぐや姫は瞳を揺らしてゆっくりと立ち上がりました。
それからまたゆっくりとした動作でみんなを見渡しました。
「俺がここに残ったらやりたい放題するけどいい?」
「……えっ?」
かぐや姫の口から出らまさかの台詞にみんな我が耳を疑いました。
「だって引退したから出番減るし。運動不足になるし。恋もしたいし。胸の話だってもっとしたいし。みんな知ってる?一、二年生達は大きさばっかり気にしてるんだよ?そこじゃなくない?女の胸ってのは」
「いや待て瀬川!だからそこまでのキャラ変更はしなくていいって!」
おばあさんは大慌てですが、かぐや姫は気にせずに続けます。
「俺気になってる事あるんだけどさ。渡辺って彼女いた事あるの?絶対あるよね?いつ?いついたの?まさか現在進行形?」
「いや今はいない!」
「それから田沼。今いい感じの子がいるよね?まだ付き合ってないの?どうなったの?」
「ちょっ…誰か瀬川止めろ!」
かぐや姫の珍しいマシンガントークにみんなタジタジです。
「俺達こういう話全然しなかったじゃん。部活ももう引退したんだしさ。ぶっちゃけて色々話そうよ。秋月は」
「もうやめろ!坂下っ!早く瀬川を月に連れ帰ってくれ!」
「私もしてみたいです。恋バナというものを」
「坂下もノッてくるんじゃねぇぇぇ!!」
「っていう初夢を見たんだよね」
学校へと向かう通学路。
「なかなか面白かったよ」
瀬川はくすくすと笑いました。
「そんな初夢でいいのかよ…」
「それな…」
田沼と山梨は揃って苦笑いを浮かべました。
「俺かっこいいじゃん!木に登ったなんて!」
井上は嬉しそうです。
「なんで俺がおじいさんなんだ…瀬川の中の俺のイメージってなんなんだ…」
渡辺はショックを受けいるようです。
「まぁ姫はどう考えても俺よりはまり役がいるけどね」
瀬川の視線の先。
今日もバカップルが並んで歩いています。
「もし秋月がかぐや姫で月に帰る事になったら緒方どうすんだろ」
田沼もバカップルを目で捉えて白い息を吐き出しました。
「緒方なら一緒に月に行って秋月の親を説得する!とか言いそうだな」
山梨はカラカラと笑いました。
「……そうだね」
相づちを打ちながらそれでも瀬川は思いました。
もし秋月がかぐや姫だったのなら、山梨の言った通り原作もなにもかも全てを無視して、緒方はこの世界のものではない月の住人と正々堂々と戦うのだろう。
それでも無理なら秋月を連れて、人里から離れた山の中へでも逃げるのだろう。
そこで慎ましくも小さな幸せを噛み締めて、二人はいつまでも仲良く暮らしましたとさ。
きっとこんな感じになるのだろうと思いました。
「みんなおはよー!」
緒方が大きく手を振りました。
「なぁなぁ緒方!もし秋月がかぐや姫で月に帰る事になったらどうする?」
井上は興味津々です。
「えっ…?かぐや姫…?よく分かんねぇけどそうだなぁ…」
緒方は月の見えない空を仰ぎました。
「秋月にどうしたいか聞く!そんで秋月がホントに望む事をする!」
「秋月が帰りたいって言ったら?」
「ホントにホントに秋月がそれを望むんならそうする!秋月が幸せになれる場所にいてほしい!」
それが例え俺の隣じゃなくなっても…
そのあとに続くそんな緒方の声が聞こえた気がして瀬川は笑いました。
そしてもしそんな日が来たのなら、緒方は自分の気持ちを押し殺して秋月の幸せを願うのだろうと、そんな確信を持ちました。
それから、そんな日が来る事がないよう、この日家族で行く事になっている少し遅めの初詣で、神様にお願いしようと決めました。
おしまい
本年も皆様にとって笑顔溢れる一年となりますよう心からお祈り申し上げます。
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