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秋月を笑わせ隊 その1
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※このお話は秋月が一年生の頃のお話です。
語り:陸上部三年生 戸倉
「あいつの表情筋どうなってんだ…」
と、神妙な面持ちで言い出したのは二年生の山梨。
高校生になって三度目の四月。
我が陸上部にも一年生が入部してきた。
今年の新入部員は八人。
その中にとんでもないのがいた。
秋月充という絶世の美女、いや、美少年。
確かに男だけど、どっからどう見ても美少女。
しかもハンパない。
これで男だっていうんだから一瞬頭の中が混乱する。
とにかくとんでもないのが入部してきた。
とんでもないのはその顔だけじゃない。
中学から高跳びをしてたって言うけど、なんで高跳びだけをやってるのか意味不明な身体能力。
そして何より意味不明なのが表情だ。
驚きを通り越して清々しいまでに変化がない。
まぁまだ入部して二週間。
他の人一年生達もまだ緊張が残ってるし、仕方ないのかもしれないがそれにしても変化がない。
同じ高跳び専攻の緒方が毎日懲りずに話し掛けまくるものの、緒方が100の言葉を発したとして秋月から返ってくるのは10にも満たない。
全く笑わなければ声に抑揚もない。
緒方はすごい。
俺だったら心が折れる。
そんな秋月が同じ中学出身だという岡田と話してる時だった。
「秋月聞いてくれ!うちのクラスに変なのいる!」
「……え、変なのってなに…?」
「名前忘れたけど同じクラスのヤツ!」
「クラスメイトを変なのとか言っちゃ駄目だよ…」
「でもちょー変!」
「どう変なの?」
「なんか…なんかこう!なんかとにかく変!」
「……なにそれ…」
その瞬間を俺達は見逃さなかった。
あの秋月がくすりと笑ったのだ。
「!!!!????見たかお前ら!!」
と、目をまん丸にした田沼を筆頭に
「見た!!秋月笑った!!」
「笑えるの?!あの子笑えるの?!」
「くそ可愛いじゃねぇか!!」
「エロさを感じる!!」
「どこが笑いのツボだったんだ?!」
二年生達大興奮。
「おいお前ら…あんま秋月にちょっかい出すなよ…?」
秋月は人と群れるのが苦手なタイプだと思う。
「戸倉さん見ました?!笑ってましたよ?!」
「見た見た」
緒方は毎日頑張って秋月に話し掛けてる。
よっぽど嬉しいようだ。
「もっと見たくないですか?!」
「……見たい」
正直見たい。
ドキマギするくらい可愛かった。
うっかり惚れそう。
「ですよね?!俺達頑張りますんで!!」
「頑張り方間違えんなよ?渡辺山梨瀬川、特に緒方と井上の暴走に気をつけろ。あと何気に田沼も。ノリノリになるとヤバイから」
「任せてください!おいどうする?!小道具用意するか?!」
「おい…山梨…」
「100均行こう100均!」
「瀬川…」
「今日部活終わったらみんな時間あるか?!」
「渡辺…お前らの団結力は買ってるけど…」
「戸倉さん!」
「どうした田沼…」
「なんでそんなにテンション低いんですか!秋月を笑わせる事さえ出来ずしてなにが陸上部ですか!」
「お笑い芸人かよ…お前らはなにを目指してるわけ…?」
二年生というのはとにかく個性が豊か。
なのに謎の団結力がある。
それがこうして時折変な方向に発動されるのが少々不安でもある。
「……まぁいっか。いけるいける」
楽しそうだし見守る事にした。
こうして二年生達による秋月を笑わせ隊が結成された。
翌日、隊員達はそれぞれ紙袋やらビニール袋を下げて部室へとやって来た。
「まずは手ぶらでチャレンジだな」
と田沼。
「よし!俺から行こう!」
と一歩踏み出したのは渡辺。
「秋月」
「なんですか渡辺さん」
「ここ、ここに何かついてるぞ?」
「……え、ここですか」
「眉毛だよーん」
くっだらねぇwww
「……はぁ…それがなにか…」
「…………なんでもない…忘れてくれ…」
渡辺撃沈。
「心臓が…心臓が痛い…」
「グッジョブ渡辺…」
「よくやった…」
「うん、頑張ってた…」
「敗因はなんだ…?」
「渡辺だからじゃない…?」
「瀬川がひどい…」
会議始めやがったww
「渡辺はあれだな!恥ずかしさが残ってるからダメなんだ!俺に任せとけ!」
次は井上がチャレンジするようだ。
「秋月!」
「はい?」
「布団が吹っ飛んだ!」
「……はい?」
「だから!布団が吹っ飛んだ!」
「はぁ…」
「だーかーら!布団が吹っ飛んだんだってば!」
「……それは大変でしたね」
労われてやがるwww
つーかダジャレなの通じてねぇwww
井上も撃沈とは秋月攻略は相当難しいのでは…
「あれを…あれを出すしかない…」
「えっ…?もう…?早くない…?」
「いや買ったやつじゃなくて俺が持ってきたやつ…ちょっと行ってくる…」
井上再チャレンジ。
「秋月!」
「……なんですか…」
秋月疲れ始めてるじゃねぇかwww
「これ!これ開けてみて!」
「はぁ…」
井上が差し出したのはまさかのビックリ箱。
中からピュー!と派手な音を立ててニョロニョロしたのが飛び出した。
「ひょわぁぁーーーっ!!」
なんで田沼が一番ビビってんだよ!
「……これがなにか…」
しかも秋月一切動じてねぇ!
「……なんでもないです…」
井上退散。
「ダメか…」
「イメージでは”びっくりしたじゃないですか!”って言って笑ってくれる感じだったのに…」
「田沼の声にビビったし…」
「悪い…」
こいつらマジでなにやってんの?!
アホすぎるwww
「とりあえず秋月に警戒されてるから…また明日出直すぞ…」
さすが山梨、と言いたい所だけどこいつら大丈夫だろうか…
秋月攻略チャレンジ二日目。
隊員達は今日も何かやる気のようだ。
一ヶ所にまとまってコソコソと話してやがる。
「よし、俺が行ってくる」
今日は田沼からのチャレンジ。
「秋月!」
「おはようございます田沼さん」
「おはよう!なぁ昨日のお笑い番組観た?」
「観てません」
「……そっか…じゃあいいや…」
終わり?!
瞬殺されすぎww
「田沼はもっとこうさぁ…なんかあっただろ…」
緒方にダメ出し食らってるwww
「もう俺が行く!」
おっ!まさかの瀬川!!
と思ったが、瀬川が向かって行ったのは秋月ではなく岡田。
「ねぇ岡田」
「なんですか?」
「秋月ってどうすれば笑うの?」
おお、さすが頭脳派瀬川。
周りから情報を聞き出す作戦のようだ。
「えっ?うーんそうですね…基本笑いません!」
「うん、だから笑わせたくて。なんか秋月の秘密とかない?」
「秘密ですか…そもそも色々謎ですからね…」
同じ中学の岡田にこう言わせる秋月は一体何者なのか…
「あ、たまご蒸しパンが好物です!」
「たまご蒸しパン?!あの顔で?!」
「はい!まぁ見た目クールですけど天然なんで!そのうち笑うんじゃないですかね!」
「天然?!誰が?!」
「秋月です!」
「嘘でしょ?!」
「マジっすよ!しかも結構ぶっ飛んでるんで!」
「ぶっ飛んでる?!」
「でもめっちゃいい奴です!見た目と雰囲気と中身のギャップがすごいんでおもしろいっすよ!」
「……そうなんだ…ありがとう…」
マジか…
「みんな聞こえてた…?」
「秋月が天然…?嘘だろ…?」
「あの真顔で訳わかんねぇ事とか言うの…?」
「あのスペックで天然でたまご蒸しパンが好きとか最強じゃね…?羨ましい…」
田沼のこういう素直なところ、好きだぞ。
「蒸しパン食ってる所とか想像つかん…」
「謎感が増したじゃん…」
「でもそのうち笑うって岡田も言ってたし…続けるしかねぇな…」
続けるんだwww
いやそれにしても驚いた。
まさか秋月が天然だったとは。
そんな部分をぜひ見てみたい。
つづく
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