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バナナオレきな粉入り
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語り:陸上部三年 山梨拓海
ババ抜きで負けた緒方がジュースを買ってきた。
ミルクティー
レモンティー
麦茶
ウーロン茶
サイダー
スポーツドリンク
バナナオレきな粉入り
秋月は先にスポーツドリンクを選び、二年の部屋へと戻って行った。
残るは六種類。
もういっそのこと、全部スポーツドリンクにしてくれれば良かったのに。
「なんでもいいよな?!買ってきたもんに文句言うなよ?!」
そう部屋を出て行った緒方。
なぜあそこで釘を刺さなかったのか、自分を恨む。
緒方だ。
緒方なのだ。
訳の分からないものを買ってくるに決まってる。
だがしかし、こんなとんでもないものが売ってるとは思わなかった。
最悪マズイと噂のイチゴ味の炭酸かと思ったが、それ以上の物があったとは…考えが甘かった…
バナナは許す。
オレも許す。
きな粉入りってどういう事だ…?
逆に全部バナナオレにしてくれた方が諦めがついた。
本来なら上手い事井上をのせて、これを押し付ける事が出来た。
なのに井上は額に肉で爆睡している。
さすがにこれ以上井上になにかをするってのも、気が引ける。
どう回避するか…
隣で正座をしている渡辺の顔色を伺う。
キャラは崩壊気味だが本当にイイヤツだ。
簡単に騙せそうだが、押し付ける訳にはいかない。
その隣の瀬川。
またにこやかに笑ってやがる。
今年も井上に落書き出来た満足感と、バナナオレは絶対に嫌だという気迫の込められた笑顔だ。
正面に座っている田沼。
まだ足痺れてんのか?
散々ババ抜きで秋月にやられてたからな…
枕を抱いてる緒方。
煩ってる。
さてどうするか。
「どうする?とりあえず第一希望出して、被ったらジャンケンする?」
この中では間違いなくミルクティーが第一希望だが、この際アレ以外ならなんでもいい。
瀬川の案が妥当だろう。
「それでいいんじゃね?渡辺と田沼と緒方もそれでいいか?」
「うん…」
「ああ、構わないぞ」
「アレ以外ならなんでもいい…」
田沼、俺もだ。
「じゃあせーのでいくよ」
「了解」
「いっせーの」
「ミルクティー!」
「せ!」
田沼のミルクティーという発言と、瀬川のいっせーのせ、の”せ”が被った。
「地域差だな」
そうだな渡辺、でも問題はそこじゃねぇよ…
ミルクティー被った…
「田沼ミルクティーね。他にミルクティーがいい人」
「「「俺も」」」
渡辺も緒方もかよ…
「俺はミルクティーじゃないから、四人でジャンケンしな」
「いくぞ、山梨、田沼、緒方」
「「おう…」」
「うん…」
「ジャーンケーンポイ!」
ポイ?!ポンじゃなくて?!
「ポイってなんだよ渡辺!」
同感だ、田沼。
「今日は地域差出るな…で、田沼の勝ちか…」
「よっしゃ!あーババ抜きより緊張した!」
同感だ、田沼。
「じゃあ次ね。渡辺も山梨も緒方もいっせーのせ、でいける?」
「大丈夫ぅ…」
緒方そろそろそのテンションなんとかなんねぇのか…
瀬川も変なとこ気にするな…
「いっせーのせ!」
「「レモンティー」」
「サイダー」
「麦茶」
くっ…!!
「今日山梨らしくないね。いつもなら競争率の少なそうなのに行くのに。俺麦茶ゲットー。渡辺はサイダーね」
確かに…どうしたんだ俺…
バナナオレきな粉入りが衝撃過ぎて、完璧戦術を誤った…
もっと他の手があったじゃねぇか…
希望制のジャンケンよりも、アミダの方が確率低かっただろ…
ウダウダ考えても仕方ねぇ…残るは俺と緒方か。
緒方はバナナオレ絶対嫌だっつってたな。
「緒方、ジャンケンすんぞ」
「うん…」
「お前やる気ねぇだろ…」
「うん…」
「じゃあ俺に譲れ」
「絶対ヤダ…秋月に会いたい…」
ダメだ…いろんな意味でダメだ…
「遅くなったしさっさと決めろよ」
渡辺、正論だ…正論だがなんかムカつく…
「おら緒方いくぞ」
「うん…ジャーンケーンポン…」
………マジかよ。
「はーい山梨、きな粉決定ー!」
瀬川…ホントこういう時の笑顔は格別だな…
「飲んでみろよ山梨!」
田沼、痺れたその足触ってやろうか?!
「ちゃんと振ってから飲めよ!きな粉沈殿してるからな!」
お前やっぱキャラ崩壊だよ渡辺!
「分かったよ…」
うっ…すげー甘い匂い…
甘いのは好きな方だけど、ご丁寧に仄かなきな粉臭がしてきやがる…
「うわっ…なにこの匂い…吐きそう…」
「おめーが買ってきたんだろ?!」
「山梨一気にいけ!」
「田沼俺を殺す気か?!」
「一気に飲み込んだ方が飲み込めるんじゃないか?」
「渡辺が正論だね。山梨、頑張れ」
正論だよ、瀬川、渡辺。
でも”飲み込める”ってなんだよ!こえーわ!
「……いくぞ」
「頑張れ山梨ぃ…」
「緒方マジ黙れ!」
「珍しい、山梨が怒ってる」
怒ってるんじゃねぇよ瀬川…
こえーよ…なんで俺負けてねぇのに罰ゲームやってんだろ…
「ぐっ……!!」
「山梨?!大丈夫か?!」
大丈夫じゃねぇ!大丈夫じゃねぇよ!なんだこのザラつき!きな粉だよ!きな粉に決まってんだろ!
「ぺってしろ!ぺってしていいぞ山梨!」
渡辺!笑わすんじゃねぇ!
「山梨トイレ!トイレ行ってきな!」
瀬川ナイスアドバイス!
いってきます!!!
トイレまで遠い!10mってこんなに遠かったか?!
「うぇっ…ゲホゲホ…おぇ…」
ありえねぇ…これを商品化したヤツの顔が見てみてぇ…
つーかこんなの考えついたヤツ誰だよ…
「お、山梨大丈夫?」
「まぁな…気持ち悪ぃけど…」
「これ意外といけるぞ…」
「はぁっ?!」
なに言ってんだ緒方…人知を越える味だったぞ…
「俺これでいいや…レモンティー山梨にあげるね…」
「……サンキュー」
最初からそうして欲しかった…
翌日、手紙を貰った緒方を見た秋月が、見た事もない顔をして、バナナオレきな粉入りを手に姿を消した。
飲んだのだろうか…帰ってきた秋月の手には、封の空いたそれが握り締められていた。
それどころじゃないって感じだったし、俺もこの後のペナルティーで煽るつもりだけど
感想語り合いてぇな…
なんて思った。
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