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夜ご飯を作ろう
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語り:陸上部三年 緒方光介
秋月と一緒にハンバーグを作る事になった。
買い物は難しくてよく分かんなかったけど、秋月が色々選んでたからきっと大丈夫だ!
一緒に買い物行ってさ…
一緒にご飯作ってさ…
やっぱ新婚さんみたいだよな…
「とりあえず玉ねぎの皮をむきましょう」
「よし!俺がやる!」
「じゃあ俺は他の野菜洗いますね」
「分かった!」
玉ねぎは怖い…
小学校の林間学校でカレー作った時、あまりの痛さに涙ポロポロだったからな…
あれっ…?
皮むくだけで玉ねぎの匂いしねぇ…?
なんか…なんか目ぇ痛いっ!
「秋月っ!玉ねぎしみる!」
「まだ皮むいただけなので気のせいです」
「気のせいじゃねぇよ!絶対痛い!」
「……これからみじん切りにするのに、今からそんなんで大丈夫ですか…」
「うー痛いー…大丈夫じゃねぇかも…」
玉ねぎ怖い…
「じゃあ切るのは俺がやるので、緒方さん目閉じててください」
「マジで?!ありがとう!」
秋月優しい…
いいお嫁さんになるな…
「秋月みじん切り出来るの?」
「中学の時に家庭科でやりました」
包丁の音が結構リズミカル。
秋月器用だからな。
「よく覚えてんな…秋月美術はダメでも家庭科は出来んだな…」
「……緒方さん…目開けてください…」
「ん?終わった?」
さすが秋月早い!
そっと目を開ける。
あれっ…?終わってなくね…?
なんか…
なんかなんか…!
「痛いっ!騙した!秋月ヒドイ!」
「美術の事はもう忘れてください」
「忘れられる訳ねぇだろ!あのキリンとゾウすごかったもん!」
「……なにがですか…」
「俺あの日夢に出てきたぞ…あいつらが追い掛けて来るんだよ…すげぇ怖い夢だった…」
「…………」
はっ!無表情になってる!
「ごめん!悪い意味じゃねぇぞ!褒めてんの!」
「どこからどう聞いても褒め言葉には聞こえません」
「夢の中に出るくらいすごかったって事!」
「……美術の話しはやめましょう…」
秋月はため息をついてまた玉ねぎを刻み始めた。
とにかく目が痛い…
こっそり閉じちゃお…
「秋月は痛くねぇの?」
「痛いですけど、緒方さんか俺がやらないと出来ないじゃないですか」
「秋月優しい…」
そっと薄目を開ける。
秋月も涙目になってる…
それでも慣れない手つきで一生懸命玉ねぎと戦ってる…
なにこれ…
可愛い…
「出来ました。生のままだとダメージ食らうので、先に炒めますね」
「えっ?生のまま入れるんじゃねぇの?」
「火を通すって書いてありましたよ」
「マジか…」
ハンバーグって大変なんだな…
「じゃあ俺スープのニンジン切る!」
「お願いします」
「皮むいた方がいいのかな…」
「ニンジンは皮に栄養があるらしいので、綺麗に洗ってそのまま使いましょう」
「なるほど!」
秋月色んな事知ってるんだな。
どう切ればいいんだ?
テキトーでいいか?
つーか!
「包丁やべぇ!めっちゃニンジン切れる!」
「包丁ですから」
気分いいな!
「よし!出来た!」
「……え、そんなに大きかったら食べにくくないですか…」
「え?そう?」
「四等分はさすがに…せっかくの驚く程に完璧な四等分ですけど…」
そうか…秋月の小さい口には大き過ぎたか…
「そもそも二人分でニンジン一本は多かったですね…」
「確かにな…じゃあ多めに作ってさ、明日の朝もこれ食えばいいんじゃね?」
「ああ、それいいですね」
名案だ!
あれっ?
秋月今笑った?
気のせいか?
あー玉ねぎの甘い匂いがしてきた。
火が通れば甘くてうまいんだよな。
「ニンジン切れた!これでいい?」
「はい、ありがとうございます」
「俺次何したらいい?」
「えっと…サラダにするレタスちぎってもらってもいいですか?」
「任せろ!」
レタスはシャキシャキ感がな!いいよな!
「俺粉吹き芋なら作れますけど、作ったら食べますか?」
「こふきいも?」
なんだそれ…
「ハンバーグの付け合せのジャガイモです」
「うん!ジャガイモ好き!秋月そんなの作れるなら、無人島でも生きてけるな!」
「大げさですよ…小学校の家庭科で作ったので覚えてるだけです」
ホントよく覚えてんな…
「俺も家庭科でなんか作ったけど、なにを作ったかも覚えてねぇぞ…」
「……まぁ緒方さんなので驚かないですけど」
「だろ!」
さすが秋月!俺の事よく分かってる!
あれっ?
気のせいじゃない…
また笑った…
絶対笑った!
なんか今日は秋月いつもよりたくさん笑うな!
さっきもあんなに笑ったの初めて見たし、やっぱ笑顔見ると嬉しい気持ちになる!
「つーか秋月ジャガイモの皮むけんの?」
「ピーラー使うので大丈夫です」
「ぴーらー?」
なんだそれ…
「皮むき器です」
皮むき器…すげぇ…
「世の中には色んな便利な物があるんだな…」
「……まぁそうですね…スープにウインナー入れますか?」
「入れる!タコ!タコさんウインナー作れる?」
「作れますよ」
「マジで?!じゃあ俺玉ねぎ炒めるの代わるからタコさん作って!」
「分かりました」
秋月が…
あの秋月が…
一生懸命タコさんウインナー作ってる…
なにこれ…
やっぱこの子天使なの…?
「緒方さん、玉ねぎちゃんと炒めないと焦げちゃいますよ」
「おお!悪い悪い!」
ついつい秋月に見とれちゃったな!
「それくらい火が通れば大丈夫ですかね。玉ねぎ冷ましてる間に粉吹き芋作りますね」
「おう!分かった!」
料理してる秋月いいな…
なにしてても可愛いけどね…
タコさんウインナーが皿にたくさん並んでる…
……ん?
「ねぇ秋月」
「はい?」
「このタコさん、タコさんじゃねぇぞ?」
なんか手みたいなのがある…
「それはソーセー人です」
「……そーせーじん?」
「母がよく作るんですよ。見様見真似ですけど、ウインナーで作った宇宙人です」
「それを作ってくれちゃったの?!」
「そうですよ」
なにこの子…
天使なの…?
でも
「ウインナーなのに名前はそーせーじんなんだな…」
「……確かにそうですね…」
「ここの部分はなに?」
「……え、どこからどう見ても顔じゃないですか」
「顔っ?!」
えっ?!顔っ?!
なんか惨劇の後みたいになってんだけど?!
「……ここで美術の実力が出るのか…」
「はい?」
「なんでもないですっ!」
「はぁ…」
危ねぇ!
秋月の前で美術の話しはしちゃダメだな!
つーかタコさんもそーせーじんの身体もちゃんと作ってあるのに、なんで顔だけ惨劇なんだ…?
ホント秋月って不思議…
出来ない事なんかありませんって感じなのに、このアンバランスな感じが可愛い…
「そろそろ玉ねぎ冷めましたかね。ハンバーグ捏ねてもらってもいいですか?」
「うん!やる!」
「調味料とかは俺入れますね」
「任せた!」
肉を鷲掴みすんのなんて初めてだな。
おお…
おおおおお!
「挽き肉の揉み心地がクセになる!」
「そのまま粘り気出るまで揉んでてください」
「そんなに揉んでていいの?!幸せだなハンバーグ!」
「……そうですね…」
俺が挽き肉を揉んでる間に、秋月はこふきいもを作り上げた。
スープにはコンソメとか塩コショウ入れてて、味見したけどめっちゃうまい!
サラダには秋月が切ったきゅうりとトマトとハムが乗っかって、これもすげぇうまそう!
料理出来ねぇっつってたけど、作り方さえ分かればなんでも作れそうだよな!
そーせーじんの顔以外は…
つーか一回見ただけで完璧に作り方覚えてるとかさすが…
そんな秋月に挽き肉の丸め方を教えてもらいながら、無事に夕飯の準備が終わった。
ままごとなのは分かってる。
大学生になったってまだまだ俺は子供だ。
でもいつか、こんな毎日が来るといいのにな…
さっき買ってきたおもちゃの指輪がポケットに入ってる。
まぁ昔の友達と話してる秋月を見て、独占欲がグワっと来ちゃったからなんだけどね…
キャラメル見てた時に隣に並んでるのをたまたま見つけて、そんで思い付いたからホントただのおもちゃだし…
しかも幼稚園の女の子用とかのやつだから、絶対秋月の指には合わねぇだろうけど…
どのタイミングで渡すかな…
秋月はたまに、ものすごく不安そうな顔をする。
あのクールビューティな秋月が、子供みたいに必死にしがみついてくる。
そんな時は抱き締めて好きだってたくさん伝えると、いつの間にかいつもの秋月に戻ってる。
言葉も思いも形には残らないから、だから何回も確かめたくなって、何回もキスして、何回も抱き締める。
でもいつでもそう出来る訳じゃねぇから、いつでも秋月の事だけが好きだよって、これを見て思い出してくれたらいい。
こんなもんでも秋月喜んでくれるかな…
さっきみたいに、また笑ってくれたらいいのにな…
声を上げて笑った秋月。
笑いながら泣いた秋月。
涙目で玉ねぎ切ってる秋月。
真剣にタコさんとそーせーじん作ってる秋月。
愛しい愛しい、大切な秋月。
そんな気持ちがちょっとでも伝わればって、たくさん抱き締めてたくさん好きだって伝えて、今日もまたどんどんと、秋月の事が好きになる。
無愛想でも、無表情でも、泣いてても、どんな顔でも見れたら嬉しいけど、でもやっぱり笑顔が見たいなって、そう思うんだ。
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