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春市は情事の後の気怠さに身を任せ、まどろんでいる……倉持の腕の中で。倉持にカラダを預けて。
倉持は、その寝顔が あまりにも亮介に似ているのに堪らず唇を寄せる。
「亮さん………」
決して声に出してはいけない その名前を、微かに口の中で呟きながら春市の唇を塞ぎ、口内を舌で犯す。
「ん……ふっ」
春市が眼を開け倉持の口づけに反応する。
舌を絡め唾液を混ざり合わせ、腕を倉持の首に回す。そして互いに腰を押しつけ、相手の反応を確認し、再び互いを求め合う。
倉持は、唇を春市の首筋から胸へと這わせ、乳首に辿り着き、舌で転がす。
「ふ、あ……っ、洋さん……!」
春市の声が甘く聞こえる。
『洋さん』………その響きは『亮さん』に似て、あの夏の日を思い起こさせる。
『亮さん……絶対、甲子園に行きましょうね……!』
高校時代に打ち込んだ野球の思い出は、あの夏の後悔をも一緒に連れて来る。
甲子園を賭けた稲城実業高校との決勝戦。倉持達、青道高校の悲劇的なサヨナラ負け。
その試合で亮介は、途中交替でベンチに下がった。
3年生の絶対的なレギュラー選手で、セカンドの名手。粘りのバッティングと抜群の選球眼で、対戦相手からは常に一目を置かれた選手の1人。
その亮介が、代打を送ってくれ、と監督に頼んだ。
弟である1年生の春市との交替を望んだ。
春市は、期待に応えてヒットを放ち、リードしたまま9回裏稲実の攻撃は2アウトと追い込んだ。
夢の舞台への切符を手にした、と思ったのに……。
準決勝で、亮介は足を負傷していた。微かに引き摺る姿を見て、倉持が気がついた。
亮介に問えば、大丈夫だ、と言われた。これ位のケガは皆も隠している、と。
他人に決して弱気を見せない亮介の静かな気迫に、倉持は沈黙した。
……あの時、亮さんのケガの事を誰かに言っておけば……
……監督に伝えなくても、哲さんや純さんに知らせておけば……
……何かの手当をしておけば……
……決勝戦の前日の練習で更に悪化させたのかも知れない………………オレが黙っていたせいで。
敗因など幾らでも出てくる。選手1人1人に、後悔は きっとある。
倉持が知らせた所で、亮介は いつも通りに練習をしただろうし、本人が、大丈夫、と言う以上、周りも何も言えなかっただろう。
だけど、と倉持は思う。倉持の後悔は、今も そこにある。
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