アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
⑦
-
いつものラブホテルで抱き合った2人は、そのまま朝を迎えた。
満ち足りたように眠る春市をベッドに残し、倉持はシャワーを浴びようとバスルームに向かう。
と、その時、隣にあった温もりを探すかのように、
春市が寝返りを打ち……「降谷くん……」と、小さく呟く。
倉持は、それを聞いて衝撃を受け……こいつも他のヤツの面影を求めていたのか、と合点する。
お互いに、好きだ、と言った事は ない。
何故、春市が自分と寝るのか、不思議に思っていた。時折、漏れる、「ふ」という音は、そうか、降谷の名を呼びたかったのか、と納得する。
そういうことか。
シャワーを捻り、アタマから浴びる。
亮さんからも、春市からも、求められない自分……
何となしに笑えてきた。くっくっ、と笑っている筈なのに、涙が出る。
オレ、って、何なんだよ、と自虐的な笑いが止まらない…………………
ホテルを時間差で後にする。
2人とも、そのまま各々の大学に向かう。2人とも
着替えに戻る余裕は なかった。
春市が大学に着くと、降谷にバッタリ会う。
「?」という顔をして、降谷が春市を見る。
「……昨日、帰ってないの?」
降谷が聞いてくる。
「え?…………う、うん、洋さん…………倉持先パイと飲んじゃって、そのまま、泊まっちゃって……」
どぎまぎしながら春市が答える。
「でも、何で分かったの、降谷くん?」
降谷にしては勘が回り過ぎる。
「服……そのシャツ、昨日と同じだから」
鋭いチェックに、春市は驚いて尋ねる。
「……ボクの服、覚えてたの?!」
降谷は花壇を見ながら答える。
「そのシャツ……緑のチェックで、小湊くんの髪は、ピンクだし、そこに咲いてる花みたいだ、って、昨日 思った」
「え……?」
降谷が指さす方を見れば、コスモスが揺れている。
「他の日は知らない。そのシャツは覚えてただけ」
「……そうなんだ」
何と言っていいのか分からぬまま、何となく笑って、降谷を見る。
いつも通りのクールな表情だ。感情が動いている様子は、ない。きっと、春市の言った事を鵜呑みにしている、……というより、興味が ないのだろう。
「降谷くん……」
「なに?」
呼び掛けたのは春市なのに、ふるふるとアタマを振って、何でもない、ごめんね、と言う。
『降谷くん……ボク、倉持先パイに抱かれてきたんだ。降谷くんに抱かれるコトを想像して……』
そう言ったら、このポーカーフェイスを崩せるだろうか?
もう一度、春市はアタマを振る。
(いや……興味なさそうに、ふーん、と言われておしまいだよね………こんなに近くにいるのに、ね……
遠いよ、降谷くん)
そして、ふと、朝 別れたばかりの倉持を思い出す。
(洋さん、好きな人がいる、って……その人を想って
ボクを抱いてるんだろうか……)
春市は、自分の心を持て余し、倉持の心情を思って
不意に涙ぐみそうになる。
(なんだか、悲しい)
見上げた秋の空は高く澄み、その青は心を打つほどに美しかった。
おしまい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 8